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ママチャリ琵琶湖一周    【1日目】
● 2008年8月2日(土) くもりときどきはれ 大阪府交野市〜滋賀県彦根市 138.0km
旅の目的

琵琶湖一周。
毎年恒例行事として。

あと、精神的には、旅の楽しさを思い出すという、「原点回帰」が目標。
成果は・・・これだけの長文なんで、だいたい感じ取れることでしょう。



大津市の繁華街から見える観覧車は、琵琶湖のシンボル。
実は未稼働で、だいぶ前に潰れた「琵琶湖タワー」の残骸。


坂の多い志賀の、迂回路。住宅が多いわりには静か。
時おり広がる一面の田園風景も、圧巻である。


マキノ町で、たまたま出くわしたお祭り。規模は小さくても、
お祭りの雰囲気は、どうしてこう、エネルギッシュなんだろう?。


琵琶湖沿いながらも、山に囲まれ秘境・菅浦の集落。
思い悩んでるときに、逃げ込むにはうってつけの場所である。

毎年恒例の旅・琵琶湖一周

僕にとって、自転車旅は「アイデア勝負」である。
時には、フェリーを使ったり、海の上に架かる橋を渡ったり、離島に行ったり。
そういう意味では、あまり同じ場所へ何度も行くことは、好きではない。

にもかかわらず、琵琶湖に関しては、別格である。
琵琶湖は、2日あればまわれるし、何より家から近い。
「散歩がてら」という気分で、ふらっと行ける場所なのだ。

ただ、毎年行くからには、必ず趣向を工夫している。
たとえば、右回りか左回りかで、風景や泊まる場所が、ガラっと変わる。
可能な限り湖沿いを走るか、逆に琵琶湖から離れた道を選ぶかで、距離が変わる。
季節によって、荷物が変わる。

自転車で、仕事の休みの期間で行けるエリアは、限られる。
だからこそ、琵琶湖のように創意工夫がしやすい場所があるということは、貴重なことである。



松原の海水浴場。これだけ土地が空いてるのに、キャンプ禁止
であることは、残念である。写真は、次の日の朝に撮影。

ひとり旅、引退。

意識しはじめたのは、20代後半になってから。
年々、体力の衰えを感じる。
年々、恐怖心が増す。
年々、孤独感が強くなる・・・

いっちょ、辞めるか。
31歳となる今年、本気でそう考えた。
げんに、今年のお盆休みはツーリングの予定を入れ、それ以外はどこにも旅立つつもりはない。
その他の3連休にしても、どこへ行こうかというプランを、考える気すらない。


夏が近づいたある日、目の前が真っ暗になった。
自分は、何を目的で生活しているのか。
自分が、人と違うと胸はって言えることって、何なのか。

本気で思い悩んだ。
その結果の1つとして気がついたのが、「ひとり旅」。
今まで無我夢中になってやってきたものを、辞めようとしているから、こんな気分になるのではないか。

そう思った2日後、琵琶湖へ向かって、自転車を走らせた。
琵琶湖一周の旅は、毎年することであり、平地が多いので、刺激が少ない。
それでも、前日は遠足を楽しむ小学生のように、ワクワクした。


さて、毎年恒例の琵琶湖・自転車旅は、思い入れ深いものとなった。

天気は朝からくもっていたが、気分はまったく落ち込まない。
今回の旅に対する、ポテンシャルが高いためだろう。

唯一の難所である、京都→滋賀の峠越えも、難なくこなす。
スピードにのって坂を下ると、すぐ後ろに自転車がついて来た。
踏み切り待ちのときに、思い切って声をかけてみると、自分の父より年配であろう男性だった。
「琵琶湖で友達がレースしているから、見に行くんですよ」と、実に楽しげな表情が印象的。
わずか数分の、こういう交流も旅の醍醐味である。


いつも琵琶湖の東から走るので、今回は西から進路をとった。
今日はやたらと、旅人を見かける。
遠慮なくこちらから声をかけ、向こうも応じる。
そんなことを繰り返すと、ますます元気になる。

ただ国道を直進するのではなく、時おり裏道を走る。
こうすることで、たとえば志賀という場所にある、地味にしんどい上り坂を回避できる。
しかも回避路がサイクルロードとして整備されているため、走りやすい。
このように、知らん間にもっとも効率よく琵琶湖を走れる道を、開拓している自分に気がつく。

さらに、安曇川町では今まで走ったことのない、国道より一本離れた道を走ってみる。
国道とは全然風景が違うので、琵琶湖まわりを走っている気がしなくて、ものすごく新鮮な気分になる。
ちなみに国道はバイパスになっていて、風景も楽しめなければ、まわりの車が怖い。
バイパス道を回避できるだけでも、じゅうぶん有意義である。


道は琵琶湖の最北端、「奥琵琶湖」へ。
ここには、「奥琵琶湖パークウェイ」という、琵琶湖の展望を眺めるための道がある。
地図上では上り坂がきついうえ、無駄に距離が長いため、走ったことがない。

いっちょ、走ってみるか。
行くことを何度もためらったが、さっきから「走ったことのない道の開拓」を楽しんでるから、ものはついでだ

左に田園風景、右に琵琶湖の景色が広がる道を抜け、奥琵琶湖パークウェイの上り口へ到着。
この上り口のすぐ付近に、「菅浦」という小さな集落がある。
小さな港に釣り船が並び、そのまわりにぎゅっと民家が密集するさまは、離島を連想させる。

なんだろう。
集落の雰囲気に、思わず感動を覚えた。
なぜ心を打たれるのか、うまく説明ができない。
強いて言うなれば、集落全体から力強い“生活感”を感じる、といったところだろうか。
集落に感動するのは、3年前に行った離島「沼島」以来である。


ここで野宿したい、という気持ちをおさえ、いざ奥琵琶湖パークウェイへ。
予想どおり、上り口からず〜っと、えんえん上り坂が続く。
いくら空がくもっているとはいえ、汗がダラダラと流れる。
平地の多い琵琶湖周遊で、ここまで本格的な峠越えが体験できるとは。

やっとの思いで、展望台へ到着。
あいにく風景は、くもっている。
ただ、風景の楽しみというものは、別に視覚的な要素だけではない。
おそらくこの風景を、今日いちばん楽しんでいると自負しながら、ゆっくりと琵琶湖を見下ろした。

残念なのは、展望台にたむろする走り屋さんたち。
午後8時に入り口が閉鎖されるこのパークウェイに、走ることなく展望台でたむろしている。
逆を返せば、午後8時以降は、このパークウェイがサーキット場になるのだろう。
静かな菅浦の集落に、夜通しでエンジン音が降り注ぐことを考えると、とても歓迎できたものではない。


パークウェイの爽快な下り坂のあと、道は琵琶湖の東側へ。
夕焼けを見るには琵琶湖沿いの道を走りたいところだが、くもっていて見られる保証はないし、何よりおなかがすいた。
琵琶湖から少し離れた国道の道を選び、ひたすら走る。

夕方6時、コンビニを見つけて夕食。
ふだんしないことだが、なんだか飲みたい気分だったので、ビールを購入。
コンビニ脇でひとり宴会していると、コンビニの店員さんに声をかけられた。
ものすごくやさしい方で、「よかったらコンビニ裏でテント張ってもいいよ、店長に言うとくし」とまで言われた。
その他いろいろ雑談をしたが、コンビニの店員さんと、ここまで仲良く話したのははじめて。

ビールを飲んだので、交通量の少ない琵琶湖沿岸の道路へと道を変更。
案の定、夕焼けは雲に隠れて見えない。
が、赤く染まる町並みが、妙にきれいである。

やがて日は落ちたが、まだ先へ進む。
いつもなら、夕暮れまでに宿か野宿先を確保するのだが。
先へ進むには、後述するが、理由がある。

完全にあたりが真っ暗になったとき、女子大生らしき2人に声をかけられた。
コンビニはどこか、という他愛ないことである。
なんだか今日は、やたらと人に声かけられる。


午後8時過ぎ、松原という湖岸へ到着。
キャンプ禁止という立て札がほうぼうにあるこの場所は、鳥人間コンテストの開催場所でもある。
ジャンプ台の骨組みが残る場所の近くで、さっそくテントを設営。

ジャンプ台の近くを選んだのは、すぐ近くにもう1組、ファミリーがキャンプしていたから。
あわよくば、夕食のおこぼれをもらおう、というイヤラシイ魂胆である。
しかしテント立ててから気がついたのだが、聞こえてくる言葉が、異国語!
英語ですら日常会話できないのに、どこのものかもわからん言葉では、およそ太刀打ちできない。


2時間ほど、波の音を聞きながらボーっとしていると、携帯が鳴った。
待ってました!

この松原まで、来た理由。
それは、アウトドア仲間であるAKiNoBuくんが、松原の近くに長期出張で来ているためである。

やがてあらわれたAKiNoBuくんの手には、お茶・スポーツ飲料・エネルギーゼリー・そしてビール。
今まさに「欲しい!」と思っているもの、すべてが揃っているではないか!
さすがは彼も、旅人である。

ふだん絶対待ち合わせしないロケーションと、いつになく疲れた表情の彼に、違和感を感じた。
それもそのはず、彼は1ヶ月間、出張先で1日たりとも休みなく働いているのだ。
些細な個人的事情で、あれこれ悩むことの多い最近の自分が、ひどく恥ずかしい。

次の日も仕事である彼は、早々に立ち去った。
しかしこの30分は、とてつもなく意味のある時間に思えた。
本当に忙しいさなか、わざわざ来てくれた彼には、ひどく感謝したい。


予想外に刺激の多かった1日をふり帰りながら、テントに入る。
相変わらず花火の音がうるさい夏の野宿も、今夜ばかりはほほえましく感じられる。


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