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ママチャリ渥美→知多→志摩周遊    【3日目】
● 2004年8月13日(金) はれ 愛知県武豊町〜三重県津市 125.6km





昨夜お世話になった、ビジネスホテル「梅元」をあとにして出発。
しばらく、港町という雰囲気がなく、ただフツーの田舎町が続く。


鳥羽行きのフェリー乗り場へ、早く着きすぎた。近くの露天に
「大あさり焼」他、名産品が食べられる屋台が大繁盛だ。


狭〜い道が続く、志摩の半島。こういう生活感あふれる
場所を通るのは、非常に気持ちがよく、どこかなつかしい。


民家を抜けて行くと、突然バァ〜っと海が広がる。こんなに
青い海が、本州にもあったんだな。のけぞるほどきれいだ。


写真中央に隠れているのが、乗り込むクルーザー。本当に
小さい。ちなみに左にいるお兄さんと、この後仲良くなる。


筐体は小さいが、パワーはでっかい。ものすっごいスピードで
海上を走るさまは、男前。最高のクルージングを楽しめた。

下り坂の恐怖

自転車の旅をしていて、おそらくいちばん気持ちがいいときが、峠を上り終えた後の下り坂。
これを味わったものは、もう自転車で旅するとりこになる、といっても過言ではない。

しかし、それと同時にいちばん事故に気を遣うのも、この下り坂。
自転車とはいえ、下りになると時速50〜60キロも出る。
車で60キロ走るより原付で60キロ走るほうがスピード感を強く感じるが、さらに小型の自転車は、さらに速く感じる。
速く感じると同時に、どの乗り物よりも無防備なので、非常に危ないのだ。
ブレーキもききにくいし。

坂が急であればあるほど、下り終わったときに腕の筋肉が疲れるのだ。




伊勢神宮界隈は、街のオブジェがすでに神宮らしき風情が
感じられる。今度来るときは、絶対観光してやるっ!

幻の4日目

※このコラムは、右の本文を読んでから見てください。

2004年8月14日(土)、はれ。
午前6時前にネットカフェを出、自転車を押して最寄り駅へ。
ただでさえ重い荷物を背負っている自転車は、パンクをしているタイヤのせいでいつもの倍ほどの重さに感じた。

30分ほど歩き、最寄り駅近くの駐車場へ。
1週間も駐車しておくわけなので、何よりも「盗難」と「いたずら」が怖い。
とはいえ、ここは高架下の無料駐車場。
すでに目の前に、天地を逆さまにひっくり返された自転車が、悲しげにこちらをにらんでいる。

ものすっごく不安。
でも、きっと来週取りに来るからな。
後ろ髪を引かれる思いで、ようやく自転車から離れた。

電車は途中まで、電気ではなくガソリンで動くワンマンカー。
風景はきれいだが、すぐに飽きてしまう。
きっと僕には、電車の旅は向いてないな。
そんなことを考えながら、不安を抱えたまま1週間を過ごすのであった・・・


完結編

2004年8月21日(土)、くもり。
朝8時に家を出て、いつもとは反対方向の電車へ。
1週間まるまる、本当に自転車のことが頭から離れなかった。
これで行ってみて、バラバラにされてようもんなら、そこから一歩も動けなくなるかも知れない。

そんな不安をよそに、「今日は午前中、電車での旅なのだ!」と割り切って、電車に乗った。
風景に田園が増えるにつれ、乗客もリュックを背負っている確率が増えつつある。
どうやらここから津方面は、電車好きな方が多いようだ。
時刻表広げてああだこうだ論議してる方もいるし。

風景は、なかなかのもの。
先週とは違い、「電車の旅もいいもんだ」と思えるようになった。
やはり、その時の気分だね、旅は。

駅へ到着し、早歩きで自転車置き場へ。
無事にいてくれよ。

無事、あった。
思わずサドルをポンポンと叩き、再会を心から喜んだ。
まさか自分が、こんなに“モノ”に対して感情移入するとは。

そのまま、国道163号線をひたすら走った。
今日はリュック1つで来ているため、自転車がものすごく軽い。
スピードが出ていいのだが、坂道でのスピード配分がわからず、ちょっと困った。

どこかで一泊する予定だったが、夕食時には家についた。
やはり荷物がないと、めちゃくちゃ早い。
また、終日くもっていたせいで、バテることもなかった。

こうして、長い長い旅は完結した。


予感的中!
昨夜は、寝つきが悪かった。
午後9時には部屋の電気を消したのだが、12時ごろまで目が覚めていた。

あまりに寝苦しいので、クーラーを少しきつめにかけたら、その後ぐっすりと眠れた。
どうやら、ただ暑かっただけらしい。


午前6時、出発。
昨日は暗くて見えなかった街並みは、海沿いをあまり感じさせない、ちょっとした田舎町。
知多半島でも西側は、ビーチが並んでにぎやかなのに、こちら東側はえらく印象が違う。

しばらく走って、知多半島の先端に到着。
つまり、鳥羽行きのフェリー乗り場だ。
午前8時だというのに、車はアホほど並び、家族連れがわんさかいる。
フェリーの航路が次々と閉鎖されていく中、ここはまだまだ心配なさそうだ。

ちなみに予定のフェリーに乗るまで、1時間半もある。
しばらくそこいらをウロウロしたり、土産屋の「せんべいの試食」を朝食代わりにバリバリ食べた。


さて、フェリーだ。
甲板にあるいすを陣取り、ひと眠り・・・と思ったが、甲板に人が多かったため、いすを何席も占領して寝るのは、ちょっと気がひけた。
少し人が少なくなったのを見計らって寝転がったら、今度はフェリーに犬を連れてるバカがいて、鳴き声がうるさい。
動物を連れて来るる行為自体はいいが、吠えさすなよ。

それにも耐え、ようやくウトウトしだしたら、今度は突然、甲板に客が押し寄せて来た。
何かと見ると、フェリーの向こうっかわに、イルカが泳いでいる。
おぉ、こいつは珍しい!
水族館以外でイルカを見るのははじめてなんで、しばらく眠るのをあきらめて眺めた。


結局、10分ほどしか眠れず、フェリーは鳥羽へ到着。
わずか10分ながらも、眠った効果は大きく、気分よく走れた。
向かった先は、志摩。
地図で見ると、日本大陸がちぎれて、フックのような形になった半島だ。

その志摩へ着いたのが、時間的にいちばんキツい、午後1時ごろ。
しかし、今日に限ってはやる気が失せたり、バテることがなかった。
なぜなら、志摩の風景がすばらしかったから!

ゆるやかなアップダウンのある道は、車が何とかすれ違えるほどの狭さ。
リゾート地と思っていたら、情緒あふれる昔の町といった感じ。
それをしばらく進むと、突然パァーっと、目の前に青い海が広がる。
「吸い込まれそうな景色」とはまさにこのことで、思わず恍惚としてしまった。
わずか1時間足らずで半島の先端へ着いたが、風景はこの旅でいちばん良かった。


半島の先端、かつてはカーフェリーが開港していたらしいが、現在は観光船(クルーザー)しかない。
そのことを知らなかったのか、ライダー数人が、立ち往生していた。
僕も、半島を折り返すのはダルイので、できればフェリーに乗りたい。
ダメだろうと、一応観光船の番をしている中学生風の少年に聞いて見た。

「自転車は乗れますよ」
思いがけない朗報!
「えっ、ホント?いくら?何時に来るの?荷物降ろしたほうがいいよね。自転車ここ置いといていい?」
あまりのうれしさに、ついついはしゃいでしまい、まわりの白い視線に気がつくのが遅れてしまった。

10分ほど待っていると、小型のクルーザー船がやって来た。
思ってた以上に小さく、自転車は本当に乗せられるのか、ちょっと不安だった。
すると、おもむろに自転車を乗っけられたと思いきや、クルーザー前面の甲板上に横倒しにされ、ぐるぐる巻きに縛られた。
何という力技!


クルージング時間は、約20分。
1,000円弱の出費は今のおサイフ事情ではかなりイタイが、暑い時間帯に道をショートカットできることを思えば安いもの。

とりあえず、さわやかにクルージングを楽しもう。
クルーザー後部の甲板へ行き、しばし風景を楽しんだ。
ポツポツと小さな島が点在している間を、クルーザーの荒いモーター音で駆け抜けるさまは、フェリーとは違った味わいがあった。

風景をひととおり見たところで、すぐ近くにいたお兄さんに声をかけられた。
がっちりとした体格は日焼けして、手にあるナップサックが「旅人です!」と言わんばかりに目立った。
どうやら神奈川から、電車を乗り継いでここまで来たらしい。
すっかり意気投合し、フェリーが到着するまで、互いに話し込んだ。
そういえば、近頃旅をしながら人と交流するということを、すっかりしていなかった。
旅人としての大事なものを、思い出させてもらった気がした。

対岸へ到着し、「またどっかで会おう!」と旅人らしきあいさつをして、お兄さんとは別れた。
自転車に荷物を積んでいると、今度はクルーザーの運転手、および受付にいる人らに話しかけられた。
何だかやけに、人に話しかけられる日だ。
いろいろ道のアドバイスなどをいただき、大変親切にしていただいた。


さて、再出発。
目的地である三重・津市まで北上するには、2つのルートがある。
1つは国道を通るルートで、一旦鳥羽まで行くものだ。
来た道なので迷うことはないが、道が「く」の字に曲がるので、やや遠回りになる。
もう1つは県道ルートで、まっすぐ北上できるのだが、明らかに道が細く、峠となっている。

どっちがいいかな〜、と考えながら走っているうちに、気がついたらすっかり県道ルートに乗っていることに気がついた。
まぁ、ヒザも元気だし、いっちょ冒険してみよう。


おおよその想像どおり、ひたすら厳しい上り坂だ。
しかも道は想像以上に狭く、しんどいからと言って、立ち止まることができない。
なんて危険なところに来てしまったんだ、と後悔しても、もちろん引き返す気はさらさらない。

ようやく峠を越え、今度は下り。
当然ながら、上りが辛かった分、かなりスピードが出るし、ラクチンだ。
ただ、相変わらず道が狭く、さらに後ろから車が次から次へと来る。
左へ寄ると溝へ落ちて大けが、右へ寄ると車とぶつかり大けがなので、集中力を欠かすことができない。
対向車が来るたびに、僕のすぐ後ろで待ってくれたドライバーの方々には、申し訳ないと思った。
あと、数多くのドライバーに迷惑をかけているはずなのに、誰一人クラクションを鳴らさなかったことは、余計に申し訳なさを感じた。


県道を越えたら、そこは伊勢神宮のすぐ近く。
せっかくだし軽くお参りしたいところだが、伊勢神宮についてはサッパリ知識がないので、もうちょっと勉強してから来たいと思った。
ややもったいない気持ちを抑えつつ、再度北へ北へと進んだ。


夕刻、左右に田園が広がるなか、目の前には夕日がまんまると浮かんでいた。
道は平坦で、十分な路肩がある。
気分はもう、最高潮に達していた。

やっぱり、旅はいい。
自分は仕事のために生きているのではなく、こうして旅をするため生きているのだ。
ただならぬ達成感と満足感を存分に感じながら、やがて日が沈む。

宿は、1日目に泊まったネットカフェでいいか。
国道沿いなので、宿を探すのは難しそうだし。


パーン、カラカラ・・・
胸いっぱいに広がっていた「幸福」を、一気に破裂させたような音が、突然耳の中に飛び込んだ。

決して大きな音ではなかったが、リラックスした体を一気に硬直させるには、十分な音だ。
明らかに、自転車のタイヤが破損した音。
あたりはすっかり闇。
さっきまでの気分とはあまりにも違った絶望感が、脳全体を覆った。


とりあえず、照明のある紳士服屋の看板前で止まり、すぐさまパンク修理。
タイヤを見てみると、クギ状の鉄クズが、思いっきり後輪にささっている。
しかもチューブを取り出すと、タイヤを貫通していた。

貫通しているわけだから、2箇所の穴をふさがないといけないのだが、こう貫通されてはふさぎにくい。
30分かけて丹念に修理してみたが、直らなかった。


こんなとき、人間の洞察力というものは鋭く反応するものだ。
近くに、ホームセンターがあった。
時間は夜の9時前、直すにはそこでお願いするしかない。

自転車を押し歩き、ホームセンターへ。
サービスコーナーに、パンク修理をお願いした。

あぁ、これでひと安心・・・かと思いきや、修理担当の人が忙しくて対応できないそうだ。
「そこを何とか・・・」とすがる思いで頼んでみたが、何度頼んでも無理。
希望の火が、完全に消えてしまった。


サイフの中身は、5,000円を切っている。
ネットカフェで泊まるとしたら、3,000円マイナスとなり、パンク修理代はあっても、飲食代がなくなる。
何かこのまま、ここでのたれ死んでしまうのではないか?
夜に異郷の地でパンク、という現実を目の当たりにしているため、そんなことを真剣に考えた。

絶望の淵の中、とりあえずなるべく冷静に考えることにした。
今の自分がすべきことは、歩くことだ。
乗っているときには感じられなかった重みを腕に感じながら、自転車を支えてひたすら夜の国道を歩いた。

歩いても歩いても、風景はただ暗いだけ。
しかし、歩いているうちに、どんどん笑いがこみ上げて来た。
人間って不思議なものだ、本当に追い込まれたときは、笑ってしまうんだな。
そう思うと、さらにおかしくなってきた。

とりあえず、下を向かずに、前を見て歩こう。
そして、笑顔を絶やさないでおこう。
いつまでも暗い顔していたら自分に負けそうだったので、可能な限り現状を楽しんでやろう、と思った。


ネットカフェに着いたのは、それから1時間後の午後10時前。
わずか1時間だが、体感的には5時間くらいに感じられた。
それだけに、到着したときの安堵感は、たまらなかった。


とりあえず、自転車は近くの駅に置いて、電車で帰ろう。
当然、来週あたりに自転車を取りに来て、再度走らないといけない。
そう、今回は「リタイア」ではない、「中休み」だ。
旅はまだまだ続くぞ!

自分にそう言い聞かせ、とりあえず今日はゆっくり休むとしよう。
あまりにも“濃い”1日だったので、今日はさすがに熟睡できるだろう。


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