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原チャリ廃村巡り〜三重県・峠村〜
● 2004年9月15日(水) はれ 大阪府交野市〜三重県飯南町





村からさらに奥の山道へ進む。左右杉に囲まれた、最高の
シチュエーションがえんえんと続く。廃村は、どこだ?


杉林の奥に、ひっそりと1件の屋敷が。ここが廃村か?おそるおそる
枯れ葉と枝が積もった地面を踏みしめ、近づいた。緊張の一瞬。


壊れたドアをくぐると、まず目に飛び込んだのが、脱穀機。
ここは農家だったのかな?さまざまな想像が、頭をよぎる。


見回す限り、ガラクタの山。人家という形跡が、ほとんどない。
それでもやはり人の家、あれこれ探るのはちょっと気が引ける。


小学6年生の、理科の教科書。昭和38年刊行だから、かれこれ
40年以上も空き家?具体的な数字は、何よりも歴史を感じる。

「廃村」。
どこか物悲しく、もの静かで、ノスタルジックな言葉。
何らかの理由で、人々がいなくなった村のことだ。

この廃村が、日本各地に点在しているということを聞いたのは、つい先日のこと。
インターネットで調べてみると、なんと関西では大阪以外すべての府県にあるという。
行ってみたい・・・
そう思ったころには、すでに原チャリにまたがっていた。


最後のほうの文章は思いっきり誇張だが、ようは、たまたま1日会社の有給がとれたことと、廃村の存在を知ったタイミングが同じだったので、行くことにした。
家からより近い場所を探したところ、今回訪問する三重の「峠」という名称の廃村が見つかった。

朝8時半に出発し、原チャリをひたすら走らせた。
奈良の県庁付近を通過し、国道369号線へ。
ここからは、風景がみるみる田舎へと変わってゆく。
民家を横切る狭い道や、自転車では絶対上りたくないような急斜面の峠道など、「これ国道か?」と思えるようなところをひたすら走った。


目的地付近である奈良県御杖村に着いたのは、正午よりちょっと前。
「比較的近場」と思いながらも、すでに3時間半も走っていたのだ。
新しくできたらしい道の駅「伊勢本街道 御杖」で小休止し、地図で廃村を確認して、再出発した。

ここから15分ほどで到着するはず。
そう思い道を走らせるのだけれど、手元にあるツーリング用の地図では、縮尺があわず現在地がわかりづらい。

やがて、1つの集落に着いた。
古い建造物がいくらか見られる。
が、農作業をしているおじさんがいるし、近くに現代風の新築がある。
ここではないな。

あたりを見回すと、その集落から1本、山へと続く道がある。
導かれるがまま、その山道へと向かった。


道は舗装さてはいるが狭く、まわりは杉に囲まれ、左側には小川が流れている。
えもいわれぬ美しい風景が次から次へと続いて行く。
この風景を見ただけでも、「来て良かったな」と思えるほどだ。

やがて、1件の人家が見えた。
道からやや距離があるものの、見るからにそこが廃屋ということがわかる。
いよいよ、着いた!


庭と思われる敷地には、杉の葉や枝が幾重にも重なり、もはや地面が見えない。
原チャリで進もうにもタイヤが埋まって進まず、歩いて廃屋へ近づくことにした。

屋敷はもちろん人が居ず、入り口や窓などが完全に壊れていた。
中へ一歩入ると、農具やら家具やらが、まるでゴミ捨て場のように散乱していた。
広さにして8畳ほどの屋敷は、もはや「生活感」というものが完全に排除されていた。

いちばん目立ったのが、まるで自分が屋敷の主人であるかのように堂々と座っている、昔の脱穀機。
あとは、おそらく誰かが掘り出したのだろう、柱に並べられた本があった。
1冊は漫画本で、明らかに絵のタッチが昔のものだ。
もう1冊は、小学生用の理科の教科書。
出版された年が「昭和38年」ということから、よほど前からこの家から人がいなくなったことがわかる。

それ以外のものは、屋敷が暗くてあまりよく見えない。
もっとよく見てみたいという欲求もあったが、それよりも暗いし“怖い”という感情が高かったので、5分もしないうちに、立ち去ることにした。
時間の止まっているこの空間を、人為的に触れてはいけない、という気もしたし。


屋敷を後にし、再度原チャリを走らせた。
が、山道の先はただ険しくなる一方で、村らしき雰囲気もなければ、建造物と思われるものが全く見当たらない。
あれ、村はないのか?
あったものといえば、明らかに原チャリでは通れないハイキングコースと、働いている林業の方々。
特に林業の方には思いっきり不審がられたため、あまり長く探検することができなかった。

ここで、致命的な失敗をしていることに気がついた。
廃村の詳細な場所や規模などを、全く把握していなかったのだ。
だから、ひょっとしたら今いる場所が実は廃村でない可能性だって十分にある。
「旅は可能な限り予備知識なく行く」という自分のこだわりが、思いっきり仇となってしまった。


結局これ以上、廃村探しは進展せず。
正午前に来た道の駅へ戻り、施設内にある温泉「姫石の湯」へ入った。
建物全面に杉の香りがし、また露天風呂をはじめ泉種も多く、気持ちよかった。


帰宅したのが、午後7時過ぎ。
よくよくインターネットで調べてみると、どうやら廃村は廃屋があった手前の集落のことだったらしい。
「ここではない」と思ったところだ。
人は住んでいるけど、“村”としての集落ではなくなっている、とのことだ。

想像とは違った結末にはなったが、廃村へ行くまでの道中にあった景色が、あまりに美しかったので、これはこれで良しでしょう。
温泉も気持ち良かったし。
最高の有給を楽しめた。


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