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沼島の夜は、非常に静か。夜中に車が走らないだけで、これ
ほどまでに静かなものなのか。当然、静かな朝を迎えられる。
遊歩道と呼ぶには、あまりに荒れすぎているお遍路道。
名物と思っていたお遍路も、今となっては昔の産物なのか?
標識を頼りに向かった灯台は、存在感こそあれど、ただ
建っているだけで展望ものぞめないし、休憩もできない。
沼島のシンボルであり、インパクトの強い岩、上立神岩。もっと
近づいてみたかったが、クルーザーなどからでないと無理らしい。
空が広く、海が見下ろせる丘。これでも昔は、松の木が生い茂る
遊歩道だったとか。森林再生のため、若い松があちこちで見られる。
静観な近代的マンションかと思いきや、全校生徒わずか14人の
沼島中学校校舎。すぐ隣には小学校が併設されている。
おのころ神社にそびえ建つ、日本の創始者といわれる神様、
イザナギ・イザナミ神。古事記や日本書紀に登場するらしい。
沼島から淡路島へ帰るフェリーでの、夕焼けのショット。
普段よりも余計に、夕焼け空が悲しく感じられた。
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昨夜は、日記を書いた防波堤のすぐ近く、フェリーターミナルの横でテントを張った。
思っていたとおり、非常に静かで安心できるな夜だった。
にもかかわらず、寝つきが非常に悪かった。
午後9時にテントに入ったのに、11時くらいまでは眠れなかった。
生活のバイオリズムが平日モードのままであることと、昨日はあまり歩いてないことが原因だろう。
起床は、午前5時半。
予想どおり、この時間からすでに釣り人がいっぱいいる。
中には、明らかに昨夜釣りをしていた人もいる。
この人ら、いつ寝るんやろ?
特に急ぐ理由はないので、いつになくゆっくりと朝を過ごし、午前7時にスタート。
まずは、フェリーターミナル前の地図を確認。
どうやら昨日は、わからんなりにも無事、お地蔵さんを9番までまわれたらしい。
朝のすがすがしい気分の中、歩き始めた。
途中すれ違う町の人は、みんなあいさつしてくださる。
朝から町をウロつく旅はあんまり経験ないとはいえ、町から温もりを感じられたのは、はじめてだ。
民家をすり抜け、まずは10番・11番を巡った。
次からは、どうやら山道に入るらしい。
相変わらず何の標識もないまま、山道の入り口らしきところを発見。
えっ、これ上るの?
そんな印象を受けるほど、非常に素朴な上り坂だ。
山道は険しい。
道そのものがあまり手入れされていないらしく、途中でくもの巣にひっかかるわ、足元は雑草に当たりまくるわ、大変である。
きっとこれは、中級レベルの登山者が歩くコースじゃないのかな?
とても、半そで半パン姿で歩く道ではない。
そんな険しい道の脇に、お地蔵さんがポツポツと点在する。
お地蔵さんは、基本的に同じ番号のものが、2体1セットで置かれている。
お地蔵さんを合掌しているすぐ右手には、次のお地蔵さんが見えるほど、お地蔵さん同志の間隔がせまい。
順調に追っていたが、25番と26番が見当たらない。
あらかじめデジカメで撮影した地図の写真を確認すると、どうやら右手に脇道があるようだ。
が、脇道らしきものがない。
唯一歩けそうな道は、かなりの急坂。
道というよりは、ただ山菜取りか何かをしているうちに、自然に開かれた獣道だ。
降りてみたが、やがて道が閉じて行く。
ここではない。
30分くらい、ひたすら周囲をウロついた。
同じところを何度も何度も歩いて、まわりから見られたら、さぞかし不審だったろう。
その間1人たりとも、道に人が来なかったからいいけど。
結局、25番と26番はあきらめた。
番号を飛ばしたのはスッキリしないけど、ないものは仕方がない。
相変わらず人通りも標識もない山道を、さらに進んだ。
久しぶりに標識を見て、近くに灯台があるとのことで見に行った。
が、まぁ何の変哲もない灯台が立っているだけ。
せめて休憩できるベンチでもあったらいいのに、「ここから先立ち入り禁止」とあり、灯台の足元まで進めない。
そこから、またひたすら歩いた。
途中で何度か道の分岐があり、そのたびデジカメで撮影した地図を確認し、方向確認。
もう標識はあきらめるとして、せめて八十八箇所めぐりの地図の印刷物でも、作ってくれないかなぁ。
とある分岐で、どう考えても道がわからない場所にたどり着いた。
右へ行くと、町に戻る。
まっすぐ行くと、別の道。
左へ行くと、行きたい道。
だから左へ行ったのだが、道が海へ降りる勢いの階段に変わった。
仕方なく降りていくと、やがて階段は崩落していて、真下には真っ黒な断崖がずらりと並ぶ。
思わず息をのみつつ、視線を左へ向けると、海岸に1本の長細い岩がたっている。
これこそが、沼島のシンボル、上立神岩。
日本列島の、はじめにできた島だという伝説があるらしい。
伝説云々はあまり信じるほうではないが、その豪快な姿には、しばし見とれてしまった。
しかし、行きたい道が見当たらず、さっきの分岐へと戻った。
実はこのとき、飲み水が残りわずかだった。
できれば町へ戻って給水したいのだが、一度山を降りてまたのぼり直すのはキツイ。
増して、時間が経つにつれどんどん暑くなってきてるので、今のうちに八十八箇所まわっておきたい。
また、行きたい道へ進むと、「八十八箇所接待所」なる場所がある。
ここでは、何かしら給水できそうだ。
とりあえず、先へ進むことにした。
とすると残った道は、まっすぐ進むしかない。
まっすぐ進んだら、途中で道が分岐しているかも知れないし。
案の定、まっすぐ進んでも、あるはずのお地蔵さんは見当たらなかった。
接待所もなし。
これで、43番・44番もパスすることとなった。
太陽は照り、ますます気温が高くなる。
そういえばさっきから、全然休んでいない。
体力的にも、かなりキツイ。
左手に、東屋への上り道があったので、最後の力をふりしぼって上った。
やっとこさ、休憩できた。
休む時間に比例してのどがかわくのだが、十分な水分はない。
お茶を少しずつのどに流し込みながら、とりあえずゆっくり休み、体力だけは回復した。
そこからの道は、今までとはうって変わって、明るい!
まわりの木がほとんどなく、空が広い。
体力も回復したところなので、気持ちよく歩くことができた。
東屋から歩いてすぐ、またも別の東屋の標識が。
さっき休んだところなので寄りたくないなぁ、と思いながらも、東屋のまわりにお地蔵さんがあるみたいなので、しぶしぶ行くことにした。
すると、60歳前後と思われる夫婦にバッタリ遭遇した。
地元の方だそうで、いろいろ話をしてくださった。
このあたりは、かつて松の木が茂る森だったそうだ。
最近は、その松がめっきり枯れ、このような景色に変わってしまったらしい。
自然破壊の代償が、空の広い絶景とは、何とも皮肉な話である。
その他、この東屋付近は気象観測の場所だったらしい。
なるほど、そのようなことが記された石碑が建てられている。
夫婦とお別れした後は、休憩もそこそこにまた歩いた。
するとまた、東屋の標識。
一体、どんだけ多いねん!
しかもこの先は、雑草だらけで道が険しすぎる。
マムシを警戒し、クモの巣をふり払い、何とか東屋にたどり着いた。
けどここ、さっきのとこやんけ!
せっかく苦労して歩いて、これかいな。
まぁ、さっき見落としていたお地蔵さんを見つけられたので、良しとしよう。
道は再び、木の生い茂る道となった。
このあたりは比較的人が通るのか、道がきれいだ。
お地蔵さんも、他のところに比べてきれいに手入れされている。
木陰が心地よかったが、のどがかわいていることには変わりなく、やや早足に進んでしまった。
もっとゆっくり、森林浴がしたかったのに。
86番までまわったところで、ようやく山道から降りた。
残り2体は、町の中にあるようだ。
それより、水分!
すぐ目の前が海水浴場だったので、まっしぐらに水道へと向かった。
「キャンプ場などでは生水を飲むな!」という小さいころからの教育なんて、こんな状況で守ってられるか!
とりあえず気が済むまで、水をガブ飲みした。
ついでに、昨日からお風呂に入ってないんで、頭と体を洗った。
管理棟らしきコンクリートの建物の下で腰をおろし、とりあえず時間を見た。
もう夕方近くかな、と思っていたら・・・まだ正午!
この島は、どんな時間の流れをしているんだ?
とりあえずお湯をわかし、カップラーメンを食べる。
すぐ横には、6人くらいの男の人が、ビール飲みながらバーベキューをしている。
そして時間がたつにつれ、どんどんと人数が増える。
こういう場を目の当たりにすると、1人であることのさびしさを思い出してしまうので、ちょっとイヤだ。
ボーっと座っていると、1人の男の人が話しかけてきてくれた。
「兄ちゃんも食うか?」と、焼きたての貝を2つ、くださった。
ハマグリのような大きさのその貝は「バカ貝」というらしく、めちゃくちゃうまい!
こんなおいしいものを肴にして、昼からビール飲めるなんて、いいなぁ。
2時間ほどの休憩ののち、再出発。
87番と88番の位置がわからないため、一度フェリーターミナルへ戻った。
戻る際に町を見ると、ところどころで男の人が集まり、酒を飲んで談笑している。
休みの日に1日家で寝たり、パチンコなんぞにうつつを抜かす都会に比べると、はるかに有意義な休日だなぁ。
地図を頭に叩き込み、再出発。
やはりわかりにくい地理ながら、何とかフィーリングで、87番と88番を巡礼。
かくして、結願!
といっても正直あまり感動はなく、「終わったね〜、これからどうしよ?」という気持ちだけが残った。
そこからは何度も、フェリーターミナルの地図へ戻っては観光スポットを探し、町めぐりのくり返し。
島に唯一ある小学校と中学校は、想像以上に近代的で、ちょっとしたマンションのようなたたずまいだった。
名所の1つである「おのころ神社」は、険しい獣道をのぼり切ったところにあり、風景こそのぞめないがなかなか古風あるところだった。
午後4時ごろ、さすがにネタ切れとなった。
商店でビールと食事を買い、フェリーターミナルへ。
旅の途中の真っ昼間にもかかわらず、ビールを飲んでしばらく海を眺めた。
このまま、またここで野宿するのもいい。
でも同じ場所で続けて寝るってのは、個人的にあまり好きではない。
じゃあ、とりあえず島を出るか。
午後6時前、夕焼けを眺めながら沼島をあとにした。
あまりに楽しかった島だけに、何とも切ない気分だった。
そして現在、淡路島側のフェリーターミナル近くの、防波堤で日記を書いている。
今日は中秋の名月!
まあるくオレンジ色に光る月が、先ほどから南の空にのぼっている。
月もさながら、海面に反射する月光もすばらしくきれいだ。
先ほど沼島で買った日本酒をコンロで温め、月見で一杯といこうかな。
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