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大津市の繁華街から見える観覧車は、琵琶湖のシンボル。
実は未稼働で、だいぶ前に潰れた「琵琶湖タワー」の残骸。
坂の多い志賀の、迂回路。住宅が多いわりには静か。
時おり広がる一面の田園風景も、圧巻である。
マキノ町で、たまたま出くわしたお祭り。規模は小さくても、
お祭りの雰囲気は、どうしてこう、エネルギッシュなんだろう?。
琵琶湖沿いながらも、山に囲まれ秘境・菅浦の集落。
思い悩んでるときに、逃げ込むにはうってつけの場所である。
松原の海水浴場。これだけ土地が空いてるのに、キャンプ禁止
であることは、残念である。写真は、次の日の朝に撮影。
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ひとり旅、引退。
意識しはじめたのは、20代後半になってから。
年々、体力の衰えを感じる。
年々、恐怖心が増す。
年々、孤独感が強くなる・・・
いっちょ、辞めるか。
31歳となる今年、本気でそう考えた。
げんに、今年のお盆休みはツーリングの予定を入れ、それ以外はどこにも旅立つつもりはない。
その他の3連休にしても、どこへ行こうかというプランを、考える気すらない。
夏が近づいたある日、目の前が真っ暗になった。
自分は、何を目的で生活しているのか。
自分が、人と違うと胸はって言えることって、何なのか。
本気で思い悩んだ。
その結果の1つとして気がついたのが、「ひとり旅」。
今まで無我夢中になってやってきたものを、辞めようとしているから、こんな気分になるのではないか。
そう思った2日後、琵琶湖へ向かって、自転車を走らせた。
琵琶湖一周の旅は、毎年することであり、平地が多いので、刺激が少ない。
それでも、前日は遠足を楽しむ小学生のように、ワクワクした。
さて、毎年恒例の琵琶湖・自転車旅は、思い入れ深いものとなった。
天気は朝からくもっていたが、気分はまったく落ち込まない。
今回の旅に対する、ポテンシャルが高いためだろう。
唯一の難所である、京都→滋賀の峠越えも、難なくこなす。
スピードにのって坂を下ると、すぐ後ろに自転車がついて来た。
踏み切り待ちのときに、思い切って声をかけてみると、自分の父より年配であろう男性だった。
「琵琶湖で友達がレースしているから、見に行くんですよ」と、実に楽しげな表情が印象的。
わずか数分の、こういう交流も旅の醍醐味である。
いつも琵琶湖の東から走るので、今回は西から進路をとった。
今日はやたらと、旅人を見かける。
遠慮なくこちらから声をかけ、向こうも応じる。
そんなことを繰り返すと、ますます元気になる。
ただ国道を直進するのではなく、時おり裏道を走る。
こうすることで、たとえば志賀という場所にある、地味にしんどい上り坂を回避できる。
しかも回避路がサイクルロードとして整備されているため、走りやすい。
このように、知らん間にもっとも効率よく琵琶湖を走れる道を、開拓している自分に気がつく。
さらに、安曇川町では今まで走ったことのない、国道より一本離れた道を走ってみる。
国道とは全然風景が違うので、琵琶湖まわりを走っている気がしなくて、ものすごく新鮮な気分になる。
ちなみに国道はバイパスになっていて、風景も楽しめなければ、まわりの車が怖い。
バイパス道を回避できるだけでも、じゅうぶん有意義である。
道は琵琶湖の最北端、「奥琵琶湖」へ。
ここには、「奥琵琶湖パークウェイ」という、琵琶湖の展望を眺めるための道がある。
地図上では上り坂がきついうえ、無駄に距離が長いため、走ったことがない。
いっちょ、走ってみるか。
行くことを何度もためらったが、さっきから「走ったことのない道の開拓」を楽しんでるから、ものはついでだ 。
左に田園風景、右に琵琶湖の景色が広がる道を抜け、奥琵琶湖パークウェイの上り口へ到着。
この上り口のすぐ付近に、「菅浦」という小さな集落がある。
小さな港に釣り船が並び、そのまわりにぎゅっと民家が密集するさまは、離島を連想させる。
なんだろう。
集落の雰囲気に、思わず感動を覚えた。
なぜ心を打たれるのか、うまく説明ができない。
強いて言うなれば、集落全体から力強い“生活感”を感じる、といったところだろうか。
集落に感動するのは、3年前に行った離島「沼島」以来である。
ここで野宿したい、という気持ちをおさえ、いざ奥琵琶湖パークウェイへ。
予想どおり、上り口からず〜っと、えんえん上り坂が続く。
いくら空がくもっているとはいえ、汗がダラダラと流れる。
平地の多い琵琶湖周遊で、ここまで本格的な峠越えが体験できるとは。
やっとの思いで、展望台へ到着。
あいにく風景は、くもっている。
ただ、風景の楽しみというものは、別に視覚的な要素だけではない。
おそらくこの風景を、今日いちばん楽しんでいると自負しながら、ゆっくりと琵琶湖を見下ろした。
残念なのは、展望台にたむろする走り屋さんたち。
午後8時に入り口が閉鎖されるこのパークウェイに、走ることなく展望台でたむろしている。
逆を返せば、午後8時以降は、このパークウェイがサーキット場になるのだろう。
静かな菅浦の集落に、夜通しでエンジン音が降り注ぐことを考えると、とても歓迎できたものではない。
パークウェイの爽快な下り坂のあと、道は琵琶湖の東側へ。
夕焼けを見るには琵琶湖沿いの道を走りたいところだが、くもっていて見られる保証はないし、何よりおなかがすいた。
琵琶湖から少し離れた国道の道を選び、ひたすら走る。
夕方6時、コンビニを見つけて夕食。
ふだんしないことだが、なんだか飲みたい気分だったので、ビールを購入。
コンビニ脇でひとり宴会していると、コンビニの店員さんに声をかけられた。
ものすごくやさしい方で、「よかったらコンビニ裏でテント張ってもいいよ、店長に言うとくし」とまで言われた。
その他いろいろ雑談をしたが、コンビニの店員さんと、ここまで仲良く話したのははじめて。
ビールを飲んだので、交通量の少ない琵琶湖沿岸の道路へと道を変更。
案の定、夕焼けは雲に隠れて見えない。
が、赤く染まる町並みが、妙にきれいである。
やがて日は落ちたが、まだ先へ進む。
いつもなら、夕暮れまでに宿か野宿先を確保するのだが。
先へ進むには、後述するが、理由がある。
完全にあたりが真っ暗になったとき、女子大生らしき2人に声をかけられた。
コンビニはどこか、という他愛ないことである。
なんだか今日は、やたらと人に声かけられる。
午後8時過ぎ、松原という湖岸へ到着。
キャンプ禁止という立て札がほうぼうにあるこの場所は、鳥人間コンテストの開催場所でもある。
ジャンプ台の骨組みが残る場所の近くで、さっそくテントを設営。
ジャンプ台の近くを選んだのは、すぐ近くにもう1組、ファミリーがキャンプしていたから。
あわよくば、夕食のおこぼれをもらおう、というイヤラシイ魂胆である。
しかしテント立ててから気がついたのだが、聞こえてくる言葉が、異国語!
英語ですら日常会話できないのに、どこのものかもわからん言葉では、およそ太刀打ちできない。
2時間ほど、波の音を聞きながらボーっとしていると、携帯が鳴った。
待ってました!
この松原まで、来た理由。
それは、アウトドア仲間であるAKiNoBuくんが、松原の近くに長期出張で来ているためである。
やがてあらわれたAKiNoBuくんの手には、お茶・スポーツ飲料・エネルギーゼリー・そしてビール。
今まさに「欲しい!」と思っているもの、すべてが揃っているではないか!
さすがは彼も、旅人である。
ふだん絶対待ち合わせしないロケーションと、いつになく疲れた表情の彼に、違和感を感じた。
それもそのはず、彼は1ヶ月間、出張先で1日たりとも休みなく働いているのだ。
些細な個人的事情で、あれこれ悩むことの多い最近の自分が、ひどく恥ずかしい。
次の日も仕事である彼は、早々に立ち去った。
しかしこの30分は、とてつもなく意味のある時間に思えた。
本当に忙しいさなか、わざわざ来てくれた彼には、ひどく感謝したい。
予想外に刺激の多かった1日をふり帰りながら、テントに入る。
相変わらず花火の音がうるさい夏の野宿も、今夜ばかりはほほえましく感じられる。
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