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観光地というよりは、地元の人のシンボルといった雰囲気の
「長洲霊堂」。ただただ、静かな時間が流れる。
見た目だけ派手な店はうまくない。なんてのは、都会だけの
常識。都会でこの店のうまさは、なかなか出会えない。
一見どこにもある、さびれた商店街。だがよく見ると、
陳列棚やらダンボールなど、「生きた商店街」の証がある。
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すべては、台風のせいだ。
出発が1日半遅れたこともそうだが、それにより旅程がだいぶずれ込んだことも。
宿を予約しなおしたり、ルートを再検討する作業は、出発直前まで及んだ。
そんなバタバタの状態で電車に乗ったら、電車が遅延。
伊丹空港では、フライト時間が遅延。
さらに熊本空港から熊本市までの送迎バスは、到着が遅延。
何もかもが、台風の影響で狂ってしまった。
挙げ句の果てに、宿の近くにあった熊本ラーメンのお店も、僕のすぐ目の前で閉店・・・
すべては、台風のせいだ。
などと、泣き言ばかりだった移動日はさておき。
九州一周キックボード旅、第三部の開始である。
台風は無事に去り、天気は朝からくもり。
気温はそう高くはないのだが、やたら湿度が高く、蒸し暑い。
朝の涼しい時間帯に距離をかせぐ、というのが夏旅のセオリーなのに、これでは意味がない。
日ごろの運動不足か、大量の汗はもちろん、時おり息苦しさを感じるので、こまめに休憩をとる。
午前中は、ひっそりとした集落と田園地帯を抜ける。
あえて国道を避けたわけだが、歩道も路肩もない細い道が続くうえ、やたらトラックが通る。
これなら、素直に国道を走ればよかった。
寄り道もしなければ、と立ち寄ったのは、たまたま目についた「長洲霊堂」。
大きなお堂と、そのまわりに古く立派な墓がいくつも立ち並ぶ。
何でも、嵐による船の難破や地震などで、命を落とした方たちを鎮魂するためのものだそうな。
1つずつのお墓の立派さもさながら、それらが無秩序に並ぶさまに、ここだけ時間が止まっているかのような独特の雰囲気を感じる。
昼は、道沿いにでかでかと看板が掲げられた、ラーメン屋。
だいたいこの手のお店は、経験上見かけ倒しだったりする。
スルーしようかと思い、お店の前を通ったときに、思わず足が止まった。
くさい。
昔、福岡出身の友人が語っていた言葉を思い出したのだ。
「博多ラーメンのおいしい店の第一条件は、店のまわりがくさいこと」。
まさしく、この条件に合致しているのではないか。
ということで、お店に入り、ラーメンを注文。
これが、期待どおり!
とんこつスープのしっかりした味が、ひと口ごとに襲いかかってくる。
このクオリティで500円というのだから、信じられない。
大阪にあれば、間違いなく連日行列ができるだろう。
ラーメン屋から少し進んだところに公園を見つけ、そこで1時間ほど横になって休憩。
夏のこの時間帯は、無理に走らず、こうしてゆっくりしたほうがよいのだ。
休憩後は、太陽が顔を出す。
しかし午前中くもっていたためか、あまり暑くはならない。
毎日、このくらいの気温であればいいのに。
えんえん市街地が続き、なかなか足を休ませるポイントが見つからない。
ようやく腰を下ろしたのは、「中島朝市」というところ。
もちろん時間も時間なので、朝市はやっていない。
やや古さを感じる商店街は、ほとんどのお店がシャッターを下ろしている。
ただ、お店の脇にスチロールやダンボールが山積みされていたりするので、朝市の面影だけは感じられる。
宿に到着したのは、午後6時。
ビールを飲みたいところだが、明日は長距離を走らなければならないので、ガマン。
というストイックさを匂わせておいて、実は数日前に飲みすぎて内蔵が弱っているだけだということは、秘密だ。
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