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久しぶりに海沿いへ着くや、空き地と工事現場の
連続。これが東北のリアルな光景である。
高台から見下ろす風景は、皮肉にも見晴らしがよい。
8年前まではどんな景色が広がっていたのだろう。
荒浜の集落跡。家屋の基礎部分やかすんだ道路の
白線が痛々しくて、しばし言葉を失う。
非常階段は無残に折れ曲がり、1階の教室は荒廃。
展示されている写真に津波の恐ろしさを感じる。
日本三景の松島を望む「双観山展望台」。
意外に視界が狭く、やや期待はずれだ。
小さな離島「雄島」。仏像や岩窟、石碑などが
多数立ち並び、独特な世界観が醸されている。
「五大堂」までの道中には、足元がシースルーの橋。
歩くことより、デジカメ等を落とさないかが怖い。
銘酒「豊盃」を教えてくれた、日本酒好きの客と
意気投合。旅でなければもっと酒が飲めるのに!
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旅の3日目から海沿いを迂回するルートを走っていたのだが、再び海沿いに戻ってきた。
例によってなるべく海の近くを走るため、国道ではなく県道の道へ。
津波によって道がガレていたらイヤだなぁ、と思っていたが、意外にも道はきれいに整備されている。
右手には「かさあげ道路」の建築が進む。
約6mの盛り土の上に道路を造られる道路のことで、防波堤の役目も果たすらしい。
津波で発生した堆積土砂や、震災時のがれきの一部を使用するという、リサイクルな一面も持ち合わせているのはすばらしい。
左手には耕された土地が広がる。
これが農地なのか、津波で流された住宅地の跡なのかはわからない。
ただ、何にも活用されていない土地がひたすら広がるさまは、ちょっと不自然に感じる。
名取川の河口に小高い展望台があったので、休憩がてら寄ってみる。
高台から見下ろすと、改めて空き地の多さを感じる。
やはりこの一帯の集落や農地が、すべて津波に流されてしまったんだろう。
さらに北に向かうと、「荒浜小学校」を案内する看板があるので、寄ってみる。
残念ながら門が閉まっており、30分ほどすれば見学ができるようなので、後回しにして海岸側へと進む。
思わず息をのむ。
町が消えている・・・
道の左右に広がるのは、建物の基礎部分のみが残る荒野。
間違いなくここに集落があり、人々の生活があり、守り続けられていた文化があった。
何でも江戸時代からの歴史がある町だったようだ。
それらが、一度の津波でリセットされたのだ。
荒野を散策してから、荒浜小学校に戻る。
1階はガラスがなくなっており、電灯やら棚やらも壊れたまま。
2階まで達したという津波の跡は、壁にくっきり残っている。
校内に展示されている、津波来襲時の写真や、荒浜地区の震災前後の比較写真を見て、改めて津波の恐ろしさを感じる。
しばらくの間、鳥肌が止まらなくなった。
荒浜を後にして、気持ちを切り替えて先へ進む。
太陽は出ているのだが、風が冷たくて強く、寒い!
昼食は、イオンのフードコートで。
こうしてフードコートを準備してくれているお店は、非常にありがたい。
食事が終わってからも、長めに休憩をとる。
再び北上していくと、小さな島の点在する光景が見える。
これが日本三景の1つ、松島か。
まだ松島の全景を見られる場所からは離れているが、もうすでにきれいだ。
もう少し進み、小高い丘にある「双観山展望台」へ。
松島の光景を見下ろせる絶好のロケーション!
・・・のはずだが、まわりの木々が成長しすぎており、視界が狭くて思ったほどの感動はない。
展望台を下って先へ進み、松島の中心地へ。
さすが日本三景、これでもかというほど人でにぎわっている。
駐車待ちで大渋滞の車の横をスーっと通り過ぎるさまは、気持ちがよい。
いくつかの島に渡れるらしく、「雄島」へと寄ってみた。
橋を渡りきるや、岩に掘られた複数の仏様や、小さく並ぶ複数の岩窟。
石碑なんかも多数あり、仏教の濃度が強い、何とも不思議な感覚に襲われる。
もう1箇所は、3つの小さな島が橋で渡されたところ。
木製の橋は幅が狭いうえ、シースルーになっている。
先にある「五大堂」へ向かう際、足元に集中することで気を引き締めるためだとされている。
それなりに景色を楽しめたし、あまり人混みにいる気分ではない。
ひととおり観光を済ませてからは、早々に松島を去る。
途中、人のいないエリアでたむろしている若者集団に、笑われながら「おい、スクーター!」と呼ばれる。
呼ばれたら極力立ち止まって話をする心づもりをしているが、何となく友好的な雰囲気でないことを察し、スルーした。
そのすぐ先ではご年配の4人の団体さんにも声をかけられ、こちらは素直に立ち止まって話をする。
そういえば松島の駐車場でも、警備員に声をかけられた。
やっぱり宮城の人って社交的なんだなぁ、と確信する。
そこからはひたすら強風と寒さに耐えながら、午後5時半にチェックイン。
昨夜と同様、ウィークリーマンションみたいなお宿だ。
もろもろ済ませてから、夕食は外食。
駅前にお店は少なく、あっても外にメニューもなく入りにくい。
そんななか、唯一開放的な雰囲気のある「居酒屋 遊」へ。
中に入るや、コワモテの店主と、ロン毛で金髪の店員が接客。
壁のモニターにはプロ麻雀の映像。
おやおや、大丈夫なんか?
入店のタイミングがよくなかったらしく、注文してから商品が届くまで時間がかかる。
が、日記をまとめたり地図で明日の行程をチェックするなど、やることはたくさんあるので問題はない。
ナメタガレイのお造りと桜姫鶏の焼き物は、いずれも絶品!
お店が落ち着いたころに、店主が話しかけてくれる。
怖い人かと思っていたら、とても人柄のよくやさしい方だった。
話しながらも、店内全体をくまなく観察してはお客さんの様子に気を配るさまは、仕事へのストイックさを感じる。
途中で入ってきたカップルとも、意気投合。
日本酒が好きとのことでおすすめを尋ねると、「豊盃」というなぜか青森の銘柄をすすめられる。
これは青森出身である店主も、同意見とのこと。
小さな酒造さんで造られており、全国にあまり流通していないそうだ。
純米酒をいただいたが、純米大吟醸のようなスッキリとした味わいで、めちゃくちゃうまい!
飲みすぎないことに気をつけながら、店主と常連さんと話の華を咲かせる。
旅でなければ、もっと長居して、いろんなお酒を楽しめるのに・・・
いつも旅先の居酒屋で盛り上がったときには、この残念な気持ちを抱いてしまう。
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