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別府港界隈の様子。最近、隠岐島に産婦人科がないことが
問題になっていたが、それ以外にないものだらけだと思う。
焼火林道途中の、土砂崩れ。こんな場所が何箇所もある。
こんな人通りのない道路も、ちゃんと整備されるのかな?
ジムニーでも一瞬躊躇(ちゅうちょ)するような、険しい道。
これが1時間以上も続いたら、そら引き返したくもなるよ。
閑静な港、波止港。海がめちゃくちゃきれいで、街灯の
明りだけで、水中深くまで見える。魚がうようよ泳いでた。
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予想に反して、人が多い。
静かな島でゆっくり旅できるというイメージが、早くも崩れ去った。
隠岐島行きのフェリーターミナル、「七類港」。
ターミナル内は比較的きれいだが、フェリー待ちしている人がひしめきあっていて、ちょっとせまい。
きっと、ターミナル設計時には、こんなに多くの客が集まるなんて、思ってもいなかったのだろう。
里帰りが終わり、父の車でここまで送ってもらった。
さて、いよいよ旅のはじまりだ。
両親に見送られ、高速船へと乗った。
高速船とは、フェリーよりも小さく、フェリーの倍ほど速い客船である。
高速船へ乗るのは、はじめてだ。
どんなものかと見てみると、中は飛行機内のように座席がずらっと並べられている。
フェリーのようにロビーなどはなく、甲板に出ることが許されない。
走行中は、シートベルトの着用を義務付けられるのだ。
甲板で風に浴びるのが好きなのに、ちょっと残念である。
潮でにごったガラス越しに、海を見るのも面白くない。
えんえん1時間、何をするでもなくボーっと過ごした。
隠岐島は、大きくわけて「島前(どうぜん)」と「島後(どうご)」の、2つの地域に分けられる。
島前は、「西ノ島」「中ノ島」「知夫里島」の3つの島で構成されている。
島後は、島前の3島より大きな島である。
まず足を運んだのは、島前・西ノ島にある「別府」という港。
港付近に商店がいくつか並ぶが、少し離れると建造物がまばらになる。
もちろん、コンビニなどはない。
何かと欧米化に急ぐ日本の都市にはない、時間が止まったような情景が、たまらなく心を落ち着かせてくれる。
時間は午後3時。
今から遠出はできない。
フェリーターミナルの観光案内所で観光地図をもらい、2〜3時間でまわれそうなところを探した。
で、目指したのは「焼火(たくひ)林道」。
地図によっては道が途中で切れていて、どう考えても人通りがない道だ。
ハナっから観光スポットだけをめぐるつもりはなく、本当の意味で島を堪能するには、こういう道をめぐるのが望ましいと考えている。
フェリーターミナルから歩いて2分すれば、もうまわりに民家はなくなった。
道は車がすれ違うのがやっとの、細い道。
途中あった集落を越えてからは、さらに上り坂をともなった。
さすがに人通りがまったくなく、途中で心細くなる。
30分ほどして、少し引き返したくなったが、ここで引き返しても行くところはない。
腹をくくり、先へ進んだ。
道はさらに細くなり、ついには舗装のないダートへと変わった。
これじゃあ、ただの山登りではないか!
見通しは悪く、当然海は見えない。
歩いても歩いても、えんえんと道が続くような錯覚に陥る。
もういやだ。
引き返したい。
何でこんなところ歩いてるんだろう?
暑さとのどの渇きも働き、頭の中が拒絶反応を起こしている。
その反面、理性はしっかりとしている。
どれだけイヤがろうと、今すべきことは、ただ前進するのみ。
なるべく何も考えないようにつとめながら、ただただ前へと歩いた。
標識すらない道に、ようやく人工物が見えたのは、午後6時。
3時間の歩行が、まるで1日中歩いていたかのように感じられる。
とりあえず、目の前にある東屋に腰を下ろした。
ここは、「焼火(たくひ)神社」という神社の、参道入口である。
山側へのびる参道は今より道が細く、うす暗い。
せっかく来たのだから行ってみたい気持ちはあったが、今の時間は宿探しを優先すべきだ。
神社はあきらめ、十分休憩をとってから、また歩き出した。
15分くらい歩くと、ようやく人の住む建造物が見えた。
「波止(はし)」という集落で、観光ホテルが1件と、海岸沿いに民家が並んでいた。
今日の寝床は、この集落での野宿に決定。
まずは、水分の確保をすることにした。
が、集落を歩いても自販機がない。
唯一あった自販機は、完全に営業停止状態。
民家の奥を歩き、商店を見つけた。
商品がほとんど並んでいないのが気になるが、とりあえず冷蔵庫にある2Lペットボトルを手にとった。
「すいませ〜ん」
声をかけたが、店の人が出てこない。
何度も叫び、ようやく出てきたと思いきや、「今日は営業やってないんですよ〜」の声。
のどが渇いてたまらなかったため、「商品あんねから、売れや!」とどなりたい気持ちだった。
が、ここは住民の都合を優先すべきだし、どなる元気すらなかったため、尻尾まいて引き返した。
結局道を少し引き返し、ホテルの売店でペットボトルを買った。
いっそホテルの空き部屋を聞くべきだったが、頭の中で「野宿」と決めていたため、すぐさまホテルを出た。
寝床として選んだのは、「波止港」。
漁船が数隻ある、小さな波止場である。
フェリーが停泊するらしく、待合室用の小さな小屋がある。
さすがに小屋の中で寝るのは気が引けたが、夜中に豪雨が降ったときには避難しよう。
民家までの距離がすぐ近く、住民から注意されるおそれはあったが、今から別の場所へ移動する元気はもうない。
小屋の前に荷物を置き、空を眺めたり海を見たり、ダラダラと過ごした。
途中、家族連れが海を見に来るが、花火をする気配はない。
もちろん、若者が車で乗り付けてくることはない。
最近は野宿しても睡眠のとれないことが多いが、今回は久しぶりにゆっくり眠れそうだ。
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