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旅の途中に差し入れをいただけると、ものすごく元気が
出る。お守りとして、最後まで飲まずに残してしまった。
吉野のわき道にある、バス専用道。予備知識とカンがないと
わからないが、実はこれ廃線跡。いちどバスに乗ってみたい。
谷瀬のつり橋。橋の前には順番待ちの人だかり、さらに橋の下には
大量のテント。さっきまで山だらけだった風景が、ウソのようだ。
かつて司馬遼太郎も愛したといわれる秘境、十津川村。平地が
あまりなく、よくもこんなところに集落がと思える。まさに秘境!
川原はとにかくだだっ広い。ただ、タイヤ跡があるため、夜中
誤って車にひかれない場所を確保。写真は次の日の朝撮影。
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親と一緒に住んでいると、早朝に起きることができない。
母親が、気配を感じて起きてくるからである。
母親に心配される年齢でない、と何度いっても、こればっかりは母親の本能らしい。
しかし今回、両親が田舎へ帰るとのことで、逆に早起きを強いられた。
午前6時に目覚め、1時間後に出発。
出発して間もなく、チェーンからイヤ〜な音がする。
見てみると、フレームの一部が変形し、チェーンに当たっている。
毎日この自転車に乗っているが、昨日までそんな現象なかったし、出発してからどこかにぶつけたわけでもない。
応急的に手でフレームを直し、若干異音を残しつつも、再出発。
すると次は、スピードメータが動いていないことに気がつく。
さっきまで、明らかに動いていたのに。
さすがに買い替えて設置する手間は惜しいので、スピードメータはあきらめて先へ進むことに。
出だしから何だか縁起悪いぞ、大丈夫か?
出発して3時間は、原チャリで走りまくって見慣れている、国道168号線。
旅気分というよりは、ただ散歩している気分である。
相次ぐマシントラブルと、家を空けていることへの不安で、なかなかテンションがあがらない。
ようやく、見慣れない道へ。
見慣れないというよりは、あえて見慣れた国道ではなく、県道を選んだのだ。
すると思った以上に上り坂が多く、ますますテンションが下がる。
ヒーヒー言いながら坂を上っていると、ふいに目の前の側道に、車が横付けされた。
男性が缶のお茶を片手に、笑顔でこちらに手をふっている。
もちろん、お茶は差し入れということだ。
ほんの少しだが、会話を交わした。
直接聞いてはないが、この男性もおそらく自転車乗りの方だろう。
雰囲気で、だいたいわかる。
これ以降、いやに気分があがった。
ほんのひとこと声をかけられるだけでも、気分がこうも変わるのだから、ママチャリの旅は面白い。
無事県道を越え、吉野川を渡る。
この吉野川より先は、えんえん山道である。
食事する場所もないだろうから、今のうちにこしらえとかなくては。
というわけで、午前11時過ぎ、コンビニで早めの昼食。
食事を終え、再出発しようとしたところに、ご年配のサイクリストに声をかけられた。
どうやら複数人で、のんびりと奈良界隈を散策するとのこと。
のんびり散策のわりには、自転車や服装が、長距離サイクリストそのものである。
まぁ、自転車と服装の矛盾については、僕が言えた立場ではないが。
案の定、山道が続く。
上り坂が、えんえん続く。
民家のない森林だらけの風景が、えんえん続く。
「自転車で登山」といっても、過言ではないだろう。
それでいて、トンネルが怖い。
従来トンネルには、自転車や歩行者が通れる歩道が設けられている。
が、このあたりのトンネルは、歩道がめちゃくちゃせまい。
そのうえ、トンネルの随所が暗くなっており、車が通り過ぎないと視界がゼロになる箇所がある。
暗さでしばらく自転車を押し歩き、トンネルを抜けるころ、サングラスかけっぱなしであることに気がついた。
目標であった十津川村に差しかかり、ようやく下り坂があらわれる。
以降、下り坂が続く。
「そろそろママチャリでの旅も引退かな」とさっきまで考えていたが、そんな気分が一気に吹っ飛ぶ爽快さである。
途中、川にかかった長〜い橋を発見。
日本一長いつり橋、「谷瀬のつり橋」である。
遠方からその姿が確認できるのだから、確かに長い。
つり橋界隈には、やたらと人が集まっている。
さっきまで山続きだったので、すごいギャップを感じる。
つり橋の渡り口にある、つり橋がよく見える駐車場で写真をとっていると、警察から声をかけられた。
注意ではなく、写真を撮ってくれるとのこと。
その後も若干会話をしたが、とても人当たりのいい人だ。
こういうのどかな場所では、警察でもいい人が多いんだな。
さらに山を下り、十津川村の中心地へ到着。
「十津川温泉」が有名らしく、温泉宿が立ち並ぶ、素朴だが活気のある集落である。
とりあえず温泉へ入ろうとウロウロしているところに、自転車乗りの人に声をかけられた。
大阪から来た方だそうだが、途中まで電車で来て、ようやくここにたどり着いたとのこと。
僕がママチャリでここまで来たことを、何度も「すごい」と賞賛してくれた。
いやらしい話だが、こういうリアクションこそママチャリ旅の醍醐味でもある。
まだ宿が見つかっておらず、日も暮れかけてくる時間帯だが、とりあえずひとっ風呂浴びる。
先を急ぎたい気持ちや、早く宿を探したいあせりが、このときばかりはどうでもよくなる。
いつも野宿するときはお風呂に入らないが、これは今後入るべきだな。
風呂から上がり、再出発。
まわりは山ばかりで、道の隣を流れる川へは降りる道がない。
野宿に適さない場所が続き、正直少しあせる。
が、かつて路肩で野宿した経験が、「大丈夫だ」と勇気づけてくれる。
とりあえず今は、走り続けるしかない。
そろそろ本格的に日が暮れるころ、ようやく集落を発見。
だだっ広い川原へ降りる道があったので、迷わず向かう。
川原はめちゃくちゃ広い。
川原のど真ん中にでもテントを張ればいいものを、なぜか橋の下へ腰を降ろした。
何かの本能だろうか?
川原は、国道とも民家とも適度に離れており、非常に静かである。
が、それがかえってさびしくもある。
あと、足場が大きな石だらけで、どうがんばってもテントを敷いたら背中がゴツゴツする。
野宿に最適と思いきや、なんだかんだで障害はあるものだ。
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