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もはや空き地化されている、紀州鉄道の廃線跡。それでも
レールと枕木が残されているあたりに、地元民の愛を感じる。
紀州鉄道の終点と思われる場所では、鉄橋がそのまま残って
いる。「危ない」とフェンスを設けないあたりは、すばらしい。
海南市から東へ延びる、野上電気鉄道の廃線跡。
遊歩道の看板が、廃線らしさを演出している。
野上電気鉄道の、さらに奥。もはや路地裏の通路としか
思えないこの道が、廃線と気がつく人はただのマニアだ。
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心配していた雨は降らず、無事一夜を過ごせた。
はいいが、あまり眠れなった。
さして騒音もなく、寒くもなかったのに、なぜだろう。
湿度が高いせいか、午前5時の段階ですでに外はあたたかい。
今日は雨が降らないうちに、動けるだけ動かなくては。
準備を済ませ、午前6時に出発。
予定では道の駅沿いの国道を上り、おととい来た山道へ戻るはずだった。
が、山道で雨が降っては、危険極まりない。
また、山道の近くに電車は走ってなく、バスは1日何回走るかわからない。
リタイアしたくても、できなくなってしまう。
ここは思い切って、海側ルートへ変更することに。
遠回りにはなるが、雨が降ったときのことを考えると、これが最良である。
出発後しばらく、太陽が顔を出す。
天気予報のうそつき!
これなら、予定どおりの山道ルートでもよかったかな?
昨日・おとといとは違い、市街地が続く。
信号も交通量も多いため、市街地を走るほど、うとましいものはない。
が、2日間も山の中にいたためか、逆に快適に感じる。
御坊の市街地に差しかかったころ、国道を1本はずれ、住宅地へ。
というのは、ここに廃線があるためだ。
前々から来たいと思っていたので、ついでなので寄ってみることに。
こいつはすごい!
在来線の終点から延びた線路が、そのまま残っている。
残された線路は進入禁止となっているが、線路のすぐ脇にある民家の物置となっている。
線路が、そのまま住宅地の風景として一体化しているのだ。
ホンモノの鉄道マニアが見たら、興奮して鼻血出すのではないだろうか?
お昼前から、空は一面雲で覆われる。
時折しめった風が吹き、いつ雨が降ってもおかしくない状況である。
が、廃線でテンションあがったせいか、夕方までなら雨でも走ってやる、という気持ちである。
海南市へ着いてからは、海とは反対側へのびる道へ方向転換。
ここから奈良方向へと走る。
ちなみにこの道の側道には、遊歩道がある。
この遊歩道は、実は廃線跡である。
さっきから、旅の趣旨が変わりつつあるぞ。
遊歩道を少し走ってみたが、アスファルトがやや荒く、自転車では少し走りにくい。
結局、一般道を走ることに。
空腹感が強かったのだが、昼食はなるべく雨が降るまで待つようにした。
が、午後1時半についに限界、コンビニへ立ち寄る。
やはり雨を警戒し、ゆっくり食べることができない。
食べ終わるや否や、すぐさま再出発。
道を進むにつれ、未舗装の廃線跡が民家のすき間からちらほら見える。
ここは一度訪れたことのある廃線だが、何度見ても趣がある。
ふと道しるべを見て、首をかしげた。
あれ、この道あってる?
地図で見てみると、途中曲がるべき道を、思いっきり通り過ぎているではないか。
ついつい廃線に見とれてしまった。
あわてて軌道修正し、紀ノ川・吉野川沿いの国道24号線へ。
ここまで来ると、もう迷うことはない。
このあたりは、民家と果樹園が多い。
今日一日だけでも、なかなかバラエティに富んだ風景を見ているな。
「ゆとりの旅」と最近心がけているが、今日は昼前から、かなりハイピッチで走っている。
国道24号線に差しかかってからは、まともに風景を見ていない。
ただ、こうして先へ急ぐ走り方は、決して苦ではない。
むしろ、このほうが僕の旅スタイルとしてあっているのではないだろうか。
ムリして「ゆとり」など持たず、自分が快適と思える旅ができたらそれでいいだろう。
あたりが暗くなり、午後7時。
すぐ近くにある大和高田駅という駅で、旅は終了。
駅近くの有料自転車置き場に、自転車を停めた。
あと3時間も走れば、家にたどりつくことはできる。
しかし、夜に走る3時間は、あまりに長く、不安すぎる。
かといって、ここらで一泊して、明日どしゃ降りのなか3時間走るのも、バカバカしい。
自転車で家まで帰れないことは、正直悔しい。
でも、紀伊半島をわずか3日でほぼ一周したんだし、今回はよしとしなくては。
当面は、旅の余韻と、毎日150円ずつ加算される駐輪代のことが、頭をめぐるだろう。
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