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大荷物をかかえ、ひたすら日本中を歩き旅する62歳の女性。
キックボードを見て「ラクそう」と言われたのは、はじめて。
高岡駅の2階にある、おみやげ屋の並ぶショッピングモール。
暗く陰気ながら、品揃えが多くなかなか繁盛している。
帰りは特急・サンダーバード号。プラットフォームで帰りの電車を
見ると、旅が終わるという実感が湧き、安堵と哀愁の念が湧く。
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夜中、何度も目を覚ます。
原因は、トラックのアイドリング音。
ドライブインだし、予測のできたことであるが、やはり不快である。
午前6時に起床するも、天気は雨。
迷わず二度寝し、1時間後に起床し、朝食。
雨はいっこうに止む気配がない。
昼まで止むのを待って、ダメならバスで帰ろう・・・
しばらくそう思っていたが、何のためルートを変更し、4日間もがんばっていたのか。
安全第一も大事だが、やはり目標達成も大事だろう。
そう思ったときにはちょうど小雨だったため、思い切って出発。
出発していきなり、峠。
歩道がないうえ、足元がヌルヌルと滑る。
これは天気が悪くなくとも、心が折れる。
車に気をつけゆっくり進み、うんと時間をかけて峠を越えた。
峠を下ってすぐにあった道の駅で、ひと息つく。
すると、1人のライダーが声をかけてきた。
カブでブラブラと旅しているとのこと。
出身地の話をすると、何と我が家のすぐ近く!
こんなところで、地元話に花を咲かすなんて。
道の駅を発ち、あいかわらず止まない雨の中進む。
何度か雨宿りをするが、止まっていたら降り続きそうな気がして、またすぐ出発する。
だいぶ雨足がゆるくなったというころ、前方を歩く1人の女性に目が行く。
明らかに僕の母より年配で、やたらと荷物を持っている。
浮浪者にしては、まったく汚さがない。
目が合うと、向こうからこちらに声をかけてくれた。
何でも、長期間歩き旅をしているとのこと。
会話の中で「伊賀上野」という地名が出たことから、少なくとも三重からここまで来たと予測できる。
旅の最中、食事をいただいたり、カバンをいただいたり、野宿中に金品を盗まれたり・・・
濃厚な旅の話もさながら、年齢を聞くと、何と62歳!
旅に優劣などない、と昔から思っているが、こればかりは「参りました」と頭を下げてしまう。
ステキな出会いに胸をときめかせるも、以降はえんえん風景の変わらない海沿いの道。
雨も完全には止んでくれず、昼食をとろうにもお店が見当たらず、テンションは下り坂。
ようやく見つけたコンビニでスタミナをつけると、あとはノンストップ!
海沿いの道がバイパス道に変わり、まわりに人が増え、いろんな視線を感じながらも、ひた走る。
あと10分でゴール!ってところで、異音とともに足に激痛。
タイヤが破裂し、破片が足に強くあたった。
あわててタイヤ交換をすると、ようやく止んだ雨が、突如強く降ってくる。
最後の最後で、なんてドラマチックなんだ。
そんな経緯を経て、ゴールである高岡駅へ無事到着。
思わず、何度もガッツポーズ。
ママチャリ旅と違って、キックボード旅は、えもいわれぬ達成感を覚える。
キックボードをたたんで駅を歩くと、あらためて背負っている荷物の重さが、身にしみる。
30歳を過ぎてから、ひとり旅の孤独感に嫌気を感じるようになった。
その矢先、こんなにも多くの人とふれ合える旅をしたのでは、当面ひとり旅をやめるわけには行かない。
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