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神社の鳥居をくぐり、少し歩くと「夫婦岩」が見える。すぐ近くに
観光旅館が密集しているせいか、朝早くから観光客でにぎわう。
フェリー乗船中の自転車。壁際にロープでしっかりと固定される。
ほとんどの荷物をほどく必要があるので、それがちょっと面倒だ。
伊良湖岬へ到着。ここから渥美半島を北上。まわりのメロン畑に
比例して、メロンの販売店が多数点在。1玉千円は、安いの?
渥美半島北西部は、でっかい工場が多数並ぶ。さすがは
トヨタ本社の近くだけある。ちなみにここから、道を迷う。
道を迷い、現在地がわかったころには夕日。ここから宿を
意識しないといけないので、夕日を楽しめないのが残念。
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目覚めは、午前5時前。
いや、厳密にいえば、目覚めの時間なんて何度もあった。
とにかく、眠れなかった。
別に外がうるさかったわけではない。
空調も、極端に暑かったり寒かったわけではない。
ひょっとしたら、ちょっとした不眠症なんだろうか?
原因はわからないが、とにかくけだるさだけを覚えながら、ネットカフェを出た。
外は、ようやく明るくなりだしたころ。
昨日は日陰に入ろうが、日が暮れかけようが、常に暑さから逃げられない状況だったが、それがウソのようだ。
ただ涼しい風を体全体に感じ、快適に進んだ。
といっても、走ってわずか10分ほどで暑さを感じた。
純粋に気温が高くなったのか、動いたせいなのかはわからないが、うっすらと汗が出てきた。
本当の今年の夏の暑さは、ハンパではない。
次第に昇る朝日を感じながら、バイパス道路を2時間ほど走った。
バイパスというのは道が広く、歩道も広めに作っている大きな道のことだ。
走りやすいのだが、路上の風景が変わらないため、面白味がない。
途中、「夫婦岩」というものが見られる神社へ、寄り道した。
普段はこんな観光名所なんて足を運ばないのだが、今回は「ゆとり」を忘れず、あえて寄ってみた。
夫婦岩というのは、海辺に2つ並んだ大きな岩を、綱でくくったもの。
断層が斜めに走っていることから、だいぶ昔に、山から落ちて来た岩なんだろう、と想像できる。
今までこういう「名所」に面白さを感じることが少なかったが、なるほど、大自然と歴史の結晶をこうして目の当たりにしてみるのも、なかなかいいものだ。
神社に賽銭を入れ、旅の無事を願って、再スタート。
スタートして間もなく、大きなリュックを抱えた外国人カップルが前から歩いて来た。
自転車で旅しているときに、同じように自転車で旅しているもの同士だったら互いに声をかけやすいのだが、こう旅のスタイルの違う人には、どうすべきか悩んでしまう。
増して、あちらは外国人と来たものだ。
とりあえず、あいさつされたら「グンムォーニン!」と舌を巻きながら発音してやろう、と何度も頭の中でシミュレーションした。
そして、すれ違いざま。
「おはようございます!」
あまりに流暢(りゅうちょう)な日本語が、外国人の口から発せられた。
一瞬口元がこんがらがったが、ようやく日本語を発する体勢になってから、すかさず大声で「おはようございます!」と返した。
それにしても、旅をしているとよくわかるのだが、外国人の礼儀というのは、非常にすばらしい。
旅の途中、あいさつでなくとも、対向車線で外国人と目が合うだけでも、彼らはニッコリとほほえんでくれる。
それにひきかえ、日本人は(特に若い世代は)、ほぼ無視だ。
「礼」という由緒ある日本文化が、外国人にのみ定着している事実に、やや疑問を感じた。
午前9時過ぎ、フェリーに乗船。
いつもなら、船内をウロウロしたり、風景をあらゆる角度から眺めたりと、ついついはしゃいでしまうのだが、今日は別。
昨日の寝不足がたたって、ただ眠たいだけだった。
ふと振り返ると、おそらく同じ自転車乗りであろう人(原色の服装、足の太さなどで予測できる)が、1列5人がけのベンチで思いっきり寝てた。
あまりに気持ちがよさそうだったので、ついつい僕もその格好で眠った。
ほどよく風が当たり、なかなか気持ちが良かった。
午後11時前、渥美半島へ到着。
ひと眠りしたが良かったのか、気分よく再スタートできた。
まったく無知の渥美半島だが、やたら畑が多いという印象があった。
畑といっても、砂地がうねってて、そこから何も出て来ていない。
「何じゃこれ?」と思っていたが、どうやらメロン畑らしい。
収穫後やったんかな?
今まで見た農場とはまた別の雰囲気のある道を、気分よく走りつつも、実はこのとき、大変なことに気がついていた。
金が少ない。
家出るときに、余分のお金を持って来たつもりが、フェリー代のことをすっかり忘れていたのだ。
そのため、今日、明日と屋根のあるところに泊まったら、ちょっとキツイ。
かといって、地図上でキャンプ場は見つからないし、野宿は前回暑さで参った苦い経験があるし・・・
さらに、お友達に「お土産」を買う予定もあるし、こいつは参った。
参りながら、北上して名古屋方向へと走り続ける。
農道を抜けて、徐々に街っぽくなってきたところで、コンビニで昼食。
相変わらず暑くて、やる気がなくなっていた。
何度も「ゆとり」という言葉を頭でくり返しながらも、金銭的な「ゆとり」がないという矛盾に、しばし頭を抱えてしまった。
さっきまで国道を走っていたのだが、その国道はここから先、自動車専用のバイパスと変わる。
前々回の旅で、バイパス走ってたら警察に怒られた苦い経験があったので、バイパスを回避し、まわり道をすることにした。
が、これが裏目に出てしまった。
道に迷ってしまったのだ。
しかも民家が密集したところだったので、地図を見ても現在地がつかめない。
引き返そうにも、迷っていることに気がついたのが、国道から結構離れてからなので、その気にはなれない。
とりあえず自分の方向感覚だけを頼りに、民家をすり抜けて行った。
2時間か3時間か、行っても行っても現在地がわからず、ただ走ることだけに没頭してしまった。
そのため、この時間に走っていた道の印象は、まるっきり残っていない。
ようやく現在地をつかんだころには、日も暮れはじめていた。
そろそろ宿探しが必要かと思ったころ、見たことある看板が目に入った。
昨日泊まったところと同じチェーン店の、ネットカフェ。
・・・違う。
毎日ネットカフェで泊まるのは、旅として不成立な気がする。
ここでネットカフェに泊まると、時間的にも場所的にも申し分ないのだが、どうも行きたくない気分が先行し、見過ごすことにした。
そんなこだわりを持っていたのが裏目に出たか、宿が見つからないまま日はどんどん暮れてゆく。
知多半島にさしかかったころには、ほぼ太陽は沈んでしまった。
どっか野宿できる場所をさがそうにも、結構都会化した街なので、それはできない。
こうなったら、駅前でビジネスホテルを当たるしかない。
こういう釣り人が集まりそうな場所には、たいがい格安のビジネスホテルか旅館があるはずだ。
予想通り、ビジネスホテルはいくらかあったが、値段は予想外に高い。
いずれも、5,000円以上する。
持ち金が持ち金だけに、そんな高価なところは泊まれない。
すっかり暗くなりながらも、そこだけはこだわり続けた。
3件ほどまわって、また走り出した。
いやぁ、参った参った。
午後8時、完全にまわりが真っ暗になってもまだ走っている自分が、参りながらおかしくなってしまった。
本当に最近、宿が見つからなかったときが、なぜか楽しく感じられる。
ひょっとしたら、本当に宿が見つからずに寝られないかも知れないというのに。
そんな楽観的な気分が、1つの看板を見過ごさなかった。
本通りから少し離れたところに、「ビジネスホテル」という文字があった。
すぐさま道をまがり、そこをたずねた。
ビジネスホテルというよりは、失礼だがややくたびれた旅館といった感じのところ。
しかし値段を聞くと、3000円。
やっぱり、宿って何とかなるもんだな。
関心しつつも、そそくさと自転車から荷物を降ろした。
ひとっ風呂入り、今部屋の中。
大変失礼なことで申し訳ないが、かびくさい。
これがクーラーのせいなのか布団のせいなのかわからないが、やや落ち着かない。
昨日に引き続き、安眠できない予感が、うっすらと頭をよぎった。
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