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キックボード紀伊半島一周    【2日目】
● 2011年4月30日(土) くもりのちはれ 三重県伊勢市〜三重県南伊勢町



海にたたずむ、夫婦岩。たいがいの人が、これを撮影したらすぐ
退散する。被写体としてではなく、風景として楽しめないものか。


まず国道から、この道に気がつく人がいるだろうか。
そしてこれが、廃線だと気がつく人がいるだろうか。


えんえん続く田園風景の一角に、異質な施設。
子どもならずとも、大人でもいろんな意味で楽しめそう。


田んぼにずらっと並んだ、手作りのかかし。微妙に
凝った造りと完成度のコントラストがシュール。


アップダウンの激しい道。体力的にはツライが、たまに
見える小さな集落を見下ろすと、少しだけ癒される。
寝るだけ、という割り切りがあったためか、思いのほか「カラオケボックス跡」での宿泊は快適であった。

朝一番に、まずは鳥羽で観光。
「二見興玉神社」という、カエルの石像が点在する神社へ。
朝早くだというのに、多くの人が参拝している。

ここでの名物は、境内から眺めることができる、海にそびえる夫婦岩。
大きさこそインパクトはないながら、2つの岩が隣接して隆起する過程や、これが祭られるようになった経緯を想像すると、見ていて飽きない。
しばらくたたずんでいて気がついたが、他の観光客は、1分も立ち止まることなく、写真だけ撮影してすぐ立ち去る。
文明の利器は、とても大事なものを人から奪っている気がして、少し悲しくなった。

夫婦岩から少し歩くと、「無料接待所」と書かれた場所がある。
入れたてのお茶を無料で配っていて、ありがたい。
けど、お茶を飲んだ後は、しつこく土産屋に案内される。
神を利用した商法、という気がして、実に不愉快である。


観光地を去ってからは、峠。
昨日ほとんど流れることなかった汗が、ダラダラとふき出す。

けっこうな坂を上ったつもりであったが、峠をのぼり切って地図を見ると、標高わずか90m。
これから先の旅で、もっとエグい坂があるだろうというのに、先が思いやられる。

建造物がほとんどない道であるが、すぐ左手に廃線跡が併走していることが、個人的にちょっとうれしい。
ほとんど自然に戻りかけているこの小道を、すぐさま廃線跡と気がついたあたりに、自分の困った趣向を感じられる。


峠を越えてからは、えんえんと田園風景。
あいかわらず建造物が少ない。

ある畑にある、やたらきらびやかな光景が目につく。
作業小屋と思われる家屋のまわりに、さまざまな色にペイントされたタイヤや、手書きの看板が、無数に並べられている。
近づいてみると、残念ながら人影はなく詳細がわからずじまい。

看板の文章などから察すると、どうやら子どもが農業体験できる施設らしい。
にしても、どう考えても、血気盛んな地元のおじさんが、1人で作ったとしか思えない。
関西圏の俗語で言うところの、「パラダイス」である。


さらにもう少し進んだ田んぼには、一風変わったかかしが並んでいる。
アニメのキャラをかたどり、衣類や靴まで再現した、こった造りである。

が、いかんせん「リアルにしよう」という気合いと、でき上がり具合のクオリティが、猛烈に反比例している。
しかも、キャラが時代的にもジャンル的にも不統一なのである。
これを見て驚くのは、きっと鳥だけではないと思う。


いったん市街地へ差しかかったと思えば、30分もしないうちに、また山道。
いいかげん人里が恋しくなりはじめたころ、風が強くなり、雲も厚く、いつ雨が降り出してもおかしくない天気になる。

みるみる下がってゆく気分に追い討ちをかけるように、タイヤが破損。
予備は4つ持って来ているけど、新品が2日もたないとなると、ゴールまで足りるのだろうか?
物理的な心配までも重なる。

複雑な気分のまま走っていると、後ろから来た折りたたみ自転車の人から、「すごいガッツあるね」と声をかけられる。
このひとことで、心がガラッと晴れる。
人からの応援というのは、何よりはげみになる。


ある地点に差しかかってからは、やたら急坂が続く。
急坂は上りも大変であるが、下りでもスピードが全然出せないので、かなり体力がいる。
いくつかのアップダウンをくり返し、いいかげん体力の限界を感じたときに、近くの港で休憩。

釣り人の視線を気にすることなく、寝転びながら地図を確認すると、何と宿からすぐ近くの地点。
それなら休憩しなくて、もうひとふんばりすればよかった。
などと考えつつ、せっかく足を止めたのだからと、長めの休憩をとった。


今夜の宿となる旅館には、午後5時に到着。
大広間の料理をせっせと用意しているあたりに、団体さんが後から来るということを察することは、容易である。
混み合う前にと、共同のお風呂で汗を流す。

案の定、風呂上りに団体が到着。
しかも、何かスポーツをしているとみられる女子中学生。

決して規模が大きいといえない旅館の壁はうすく、部屋では絶え間なくキャッキャと笑い声が聞こえる。
追い討ちをかけるように、外では花火だか何だか、ボンボンと大きな音が定期的に聞こえる。

野宿ならまだしも、なぜ金を支払った宿で、眠れるかどうかを心配しないといけないのだろうか。


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