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朝早くから人が集まる、室戸岬。朝日に輝く断崖が
えんえんと広がる。観光としてもう一度訪れたいな。
羽根町の海岸に、和太鼓の音が鳴り響く。舞台上部には
こいのぼりが多数泳いでいる。こんな雰囲気、大好きだ!
国道を回避できる自転車道は、意外によく整備されていて、
長い距離設置されている。風景が入れ替わるので、飽きない。
こんなに天気がよく、これほど広いビーチに人影がないなんて、
信じられない!自転車がなければ、きっと泳いでいただろう。
路肩の一角にある常設テントは、お遍路さんの休憩所。
ここで止まってなければ、本気で事故していたと思う。
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午前1時と、午前4時。
健康ランドでもそうだったのだが、この時間になると必ず目が覚めてしまう。
目を覚ましたら、すぐさまテントの外の様子をうかがった。
というのも、テントを張ったすぐ下の砂は昨日濡れており、ひょっとしたら満潮時にテントごと飲み込まれるのではないか、と心配したからだ。
大丈夫だ。
ほっと胸をなでおろし、空を見上げると、あれだけあった雲がすべてなくなり、満天の星空が広がっている。
外へ出て眺めたかったが、外はめちゃくちゃ寒いので、テントから顔だけ出してしばらく見入った。
海岸から昇る朝日を見て、外がある程度暖かくなった午前6時半に、テントを出た。
左手に広がる断崖は朝日に照らされ、えもいわれぬ美しさを魅せていた。
昨日の夕方に、この断崖の美しさに気が付かなかったことが、非常にもったいない。
1時間ほど走って、室戸岬の先端部に到着。
朝早いにもかかわらず、けっこう多くの人がいた。
室戸岬は遊歩道などがもうけられており、下手に出店の多い観光スポットとはうって変わって、純粋に自然を満喫できる。
いつか、こういう場所を観光したいなぁ・・・と思いつつ、1人ではこういうところは楽しめないことを知っているので、写真だけ撮って通り過ぎた。
断崖だらけの東側とはうって変わり、室戸岬の西側はヤシの木が街路樹として生えていて、ちょっとしたリゾート地を思わせる雰囲気がある。
ただ、この街路樹がほとんど枯れているところを見る限り、バブルの崩壊とともに廃れてしまった、と思われる。
しかし、このあたりはコンビニが少ない。
空腹をガマンし、民家に差しかかったところでコンビニを発見したのは、午前9時。
朝食の最中、お遍路をされている、明らかに定年を過ぎている男性に声をかけられた。
そういえば、今回の旅でまともに人と会話したのが、これがはじめてかも知れない。
会話そのものは大きく盛り上がるものではなかったが、元気づけられた。
朝食を終え、30分ほど走った先の海岸が、やけににぎやかだ。
のぞいてみると、地元のお祭りをやっている。
海岸沿いの砂浜に舞台があり、和太鼓が鳴らされている。
その舞台を正面にして、左右に出店が並んでいる。
せっかくだし、ちょっと寄ってみることにした。
雰囲気が、とにかく良い!
何と表現しようか難しいが、どことなくなつかしい気持ちになった。
残念ながらうちの地元ではお祭りという文化がないのだが、盆踊りのようにこうしてご近所さんが集まることは、小学校のころにいっぱい経験した。
とりあえず高知名物アイスクリンを食べながら、しばしお祭りの雰囲気を堪能した。
こういう地元のお祭りを体験できるのも、旅の醍醐味だなぁ。
再出発すると、徐々に民家から街へと風景が変わってきた。
と同時に、徐々に暑さが増した。
国道はどんどん車が多くなってきたし、路肩も狭いし、こいつは走りにくい。
と思っていると、国道に並行して、海岸沿いに自転車道があることに気がついた。
自転車道はきれいに整備され、時折木陰に隠れたり、民家のすぐ裏を通りすぎるなど、とても走っていて気持ちのよい道だ。
自転車道をひたすら走っていると、やがて左手に広〜いビーチが見えた。
安芸ビーチ。
シーズンオフにもかかわらず、人手が多い。
よくよく見てみると、どうやらサーファーの人らがたむろしているようだ。
とりあえず人が少ない場所で、休憩することにした。
レンガ造りの建物から、海に向かって木の板でできた高台が延びている。
そこに立つ、広いビーチと海が一望できる。
爽快!
人さえいなければ叫びたいほど、とにかく気分がよかった。
ひととおり風景を満喫してからは、その場で大の字になってしばらく休憩した。
そういえば、自転車で旅するときは、こうして休憩をとることが少ない。
やっぱり気分転換のためにも、こうして休憩をとるべきだな。
30分か1時間か、とにかくゆっくりしてから、ビーチをあとにした。
やがて自転車道がなくなり、完全な市街地となったところで、昼食をとった。
さすがに四国も南側になると、うどん屋さんが少ない。
少ないながらも、うどん屋を探して食べた。
そこからは、ひたすら走った。
午前中のようにゆっくりできるポイントがないし、午前中の分の距離を取り戻したい気持ちもあって、とにかく走りまくった。
午後5時半、コンビニで夕食。
コンビニ横のベンチに腰かけてごはんを食べようとしたときに、横に地元のおばあちゃんが座った。
そして、いろいろ昔話をしてくれた。
話は時折わかりにくい箇所があったが、おばあちゃんが昔お遍路さんをしていたときの話を聞いた。
昔は食糧も医療も十分でなかったため、お遍路さんは神様への感謝の気持ちを持ってしていた、ということを知った。
おばあちゃんと別れ、夕食を食べ終わると、時刻はすでに午後6時。
宿探しの時間の、もうリミット間際だ。
コンビニから少しだけ離れた場所に、海岸を示すの標識があったので、向かった。
が、海岸が見当たらない!
砂地はあるのだが、釣り人がまだいるし、満潮時に明らかに海に飲み込まれそうだ。
あせる気持ちを抑え、ひと山越えてとなり町へ向かった。
もうだいぶ暗いし、民宿でも泊まればいい。
そう思っていたが、宿泊施設がない!
民家などは多くあるのだが、宿泊施設が全く見当たらない。
とりあえず、海辺で野宿先を探そう!
国道から外れ、海沿いの道へ差し掛かったとき、急にあたりが暗くなってきた。
間もなく、雨が降ってきた。
ここで、ただならぬ絶望感に襲われた。
とにかく、宿がないのだ。
民家が近いので、野宿するにも相当やりづらい。
そもそも、雨降っている状況で、テントをたてること自体が大変なことだ。
足を止めて考えても、結論は出そうにない。
あたりが真っ暗になったら、どうにもならなくなる。
国道に戻り、一か八かで、もう1つ隣町へ進むことにした。
ちなみに隣町へ行くには、大きな峠を越えないといけない。
1時間はゆうにかかりそうだ。
暗闇の峠なんてあまりに危険だが、今は進むしかない。
レインコートを着る時間も惜しんで、雨を浴びながら走った。
峠は、思った以上にきつくて長い。
「よし、もう少し、がんばれ、がんばれ!」と、無意識のうちに自分をはげますように、声を出していた。
それほどまでに、精神的に追い詰められていたのだ。
泣いて助かるのであれば、今すぐここで号泣してもよい、と思いながら。
あるトンネルを抜けたところに、ポツンと建てられた常設テントが見えた。
山道の国道によくある、車が一時的に止まれるように少し膨らんだ路肩にあった。
まわりには、民家は見当たらない。
「ここだ」
何の迷いもなく、そこで足を止めた。
よくよく見てみると、そこはお遍路さんの接待所。
木製の大きなテーブルが真ん中にあり、プラスチック製の長いすが2つある。
テーブルと長いすを少しずらし、ギリギリできたスペースに自分のテントを張った。
こんなときだけ、神様の存在を信じてしまうのは、いけないことだろうか?
神様に感謝をしつつも、どうやらいずれ、お礼参りをしないといけないだろう、と思った。
しかしながらこの場所は、なかなか坂がきつくて、眠りにくい。
隣はすぐ道路なので、車の音が思いっきり聞こえてくる。
特に大型車やアメリカンバイクなどが通るたびに、ビクッとしてしまう。
毎日心配していることだが、今日こそ本当に眠れないのではないかな?
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