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キックボード青森→宮城    【5日目】
● 2019年8月7日(水) くもりのちはれ 岩手県普代村〜岩手県宮古市


民家もなく車もほぼ通らない道なのに
きれいに整備されていて心地よい。

「机浜」に鎮座する、浜を覆っていたはずの
防波堤の跡。津波の力強さを痛感する。

まさに裏道という感じの、自然に囲まれた細道。
意外に車通りがあったり虫が多かったりで悶絶。

山深い景色を、橋の上から見下ろす。
海の近い国道であることを忘れてしまう。

カーブの形状をここまでリアルに図示
することで危機感が増す。うまいぞ。

ヘドロまみれのタイヤ。これではまともに
回転するはずがない。思わぬアクシデント。

上層階はきれいなのに2階までが見事に崩壊し
無残な姿をしている「たろう観光ホテル」。
予定より早く目覚めた午前5時半。
朝風呂に入るか悩むも、体を温めると出発後にクソ暑くなるだろうと感じ、あきらめて二度寝する。

午前7時半、チェックアウトを済ませていると、宿の人がキックボードに気づいてくれて話しかけてくれる。
こうして宿の人が旅のことに触れてくれるのは、この旅でははじめて。
去年から感じていたが、日本の北に行くほど他人への無関心を感じてしまう。
もしくは、ただシャイなだけなのか。


相変わらず霧で景色が楽しめないまま、ゆるやかなアップダウンを進む。
ほどなくして長い下り坂。
車も少なくスピードをあげていると、突然パンと小さな爆発音。
後輪が壊れたことを察知してすぐさま止まって見ると、後輪から煙があがっている。
タイヤが壊れるなんてよくあることだが、音と煙ははじめてである。

坂を下りきったところの机浜には、浜辺に瓦礫(がれき)のような塊がある。
近づいて見ると、かつてこの浜に建っていた防波堤の一部であることがわかる。
こういう遺構を見ると、津波の力強さをまざまざと思い知らされる。


そのまままっすぐ道を進むと国道に合流するのだが、とんでもない坂を越えないといけない。
そのため、途中右手にある細い裏道を進む。

とはいえ、この道もたいがい急な上り坂が続く。
しかも左右が自然に囲まれており、歩いていると体にハエやアブがたかる。
鬱陶(うっとう)しいだけならまだしも、アブに足を2箇所もかまれる。

いいかげん苛立ちが爆発。
足を止め、持参している「ハッカ油」を体中にふりかける。
するとどうだ、さっきまでいたハエやアブが、ウソのようにいなくなる。
どうだまいったか!という気持ちとともに、なぜはじめからふりかけなかったのだろうかと後悔をする。


国道に合流して、なだらかなアップダウンを繰り返す。
途中で橋を渡るのだが、橋の下には谷底が広がり、ヒヤリとする。
海に近い場所なのに、山深い景色というギャップが面白くもある。

やがて長く急な下り坂に差しかかる。
勢いよく下り、坂を下りきったあたりで、またしても後輪から破裂音。
今回はえらくトリッキーなタイヤの壊れ方をするものだな。
タイヤを交換したいところだが、立ち止まれる場所がない。
すると視線の先にコンビニがあったので、ほぼ回らないタイヤを引きずるように進む。

何とかコンビニに到着して、タイヤ交換ついでに昼食をとる。


再出発後にはトンネル越え。
足元がぬかるんでおり、はじめは横滑りに気をつけて進んでいたが、ぬかるみがどんどんひどくなり、そのうちタイヤが回りづらくなる。
トンネルを抜けてから見てみると、案の定タイヤがヘドロまみれ。

スピードが出ないまま進み、民家沿いの溝にキックボードを突っ込み、流水でヘドロを洗い流す。
こんな経験ははじめてである。

その先の下り坂を走ると、やたら前輪が震えることに気がつく。
坂を下ったところでタイヤを確認すると、前輪がほとんど回っていないことに気がつく。
さきほどのヘドロで、ベアリングが詰まったのだろう。
ごくまれに同じ現象が起こっていたが、前輪が原因だったのか。


そこからは長いアップダウンを経て、田老の集落へ。
ここも津波に流された町で、遺構として「たろう観光ホテル」が残っている。
遠くから見ると普通にきれいなホテルに見えるが、近づくと1階と2階は骨組みしか残っていない。

中へ入ろうとしたが、フェンスが設置され施錠されており、入れない。
どうやら予約がないと入れないそうだ。
少し前までは自由に入られたらしい。
何か事故か事件でもあったのかな?
より多くの人が津波の恐ろしさを肌で感じられるよう、一般開放するべきだと思うのだが。


いつの間にやら時間が押しており、徐々に日が暮れてゆくなか、ゴールのことしか考えられない状況となる。
旅をしていて、いちばんよくない精神状態である。

宮古の市街地に近づいたところでスマホのナビを使うと、とんでもない裏道を案内される。
すでに空が薄暗くなってきているので、少しでも近道をするべく、それに従う。

細く急坂となった墓地の横道をすり抜け、民家に差しかかる。
すると家の外で、鍋に火を灯す光景があちこちで見られる。
これはこの宮古地方伝統の「松あかし」というもので、8/1、8/7、8/13〜16、8/16、8/20、8/31に行われるお盆の行事だそうな。
きれいだなぁとは感じるものの、その光景を立ち止まって眺めたり写真を撮る気持ちの余裕がなく、ひたすら宿に急ぐ。


結局宿に着いたのが、午後7時過ぎ。
お風呂であまりゆっくりすることもできず、すぐさま夕食を探しに行く。

店外の雰囲気で決めたお店は、地の物が多く取り揃えられており、店員もハキハキとしている。
しかし、店員とも他の客とも会話ができず、期待はずれである。

何だか1日通して、グダグダな気分である。
たまにはこんな日があっても仕方ないか。


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