|
民家もなく車もほぼ通らない道なのに
きれいに整備されていて心地よい。
「机浜」に鎮座する、浜を覆っていたはずの
防波堤の跡。津波の力強さを痛感する。
まさに裏道という感じの、自然に囲まれた細道。
意外に車通りがあったり虫が多かったりで悶絶。
山深い景色を、橋の上から見下ろす。
海の近い国道であることを忘れてしまう。
カーブの形状をここまでリアルに図示
することで危機感が増す。うまいぞ。
ヘドロまみれのタイヤ。これではまともに
回転するはずがない。思わぬアクシデント。
上層階はきれいなのに2階までが見事に崩壊し
無残な姿をしている「たろう観光ホテル」。
|
予定より早く目覚めた午前5時半。
朝風呂に入るか悩むも、体を温めると出発後にクソ暑くなるだろうと感じ、あきらめて二度寝する。
午前7時半、チェックアウトを済ませていると、宿の人がキックボードに気づいてくれて話しかけてくれる。
こうして宿の人が旅のことに触れてくれるのは、この旅でははじめて。
去年から感じていたが、日本の北に行くほど他人への無関心を感じてしまう。
もしくは、ただシャイなだけなのか。
相変わらず霧で景色が楽しめないまま、ゆるやかなアップダウンを進む。
ほどなくして長い下り坂。
車も少なくスピードをあげていると、突然パンと小さな爆発音。
後輪が壊れたことを察知してすぐさま止まって見ると、後輪から煙があがっている。
タイヤが壊れるなんてよくあることだが、音と煙ははじめてである。
坂を下りきったところの机浜には、浜辺に瓦礫(がれき)のような塊がある。
近づいて見ると、かつてこの浜に建っていた防波堤の一部であることがわかる。
こういう遺構を見ると、津波の力強さをまざまざと思い知らされる。
そのまままっすぐ道を進むと国道に合流するのだが、とんでもない坂を越えないといけない。
そのため、途中右手にある細い裏道を進む。
とはいえ、この道もたいがい急な上り坂が続く。
しかも左右が自然に囲まれており、歩いていると体にハエやアブがたかる。
鬱陶(うっとう)しいだけならまだしも、アブに足を2箇所もかまれる。
いいかげん苛立ちが爆発。
足を止め、持参している「ハッカ油」を体中にふりかける。
するとどうだ、さっきまでいたハエやアブが、ウソのようにいなくなる。
どうだまいったか!という気持ちとともに、なぜはじめからふりかけなかったのだろうかと後悔をする。
国道に合流して、なだらかなアップダウンを繰り返す。
途中で橋を渡るのだが、橋の下には谷底が広がり、ヒヤリとする。
海に近い場所なのに、山深い景色というギャップが面白くもある。
やがて長く急な下り坂に差しかかる。
勢いよく下り、坂を下りきったあたりで、またしても後輪から破裂音。
今回はえらくトリッキーなタイヤの壊れ方をするものだな。
タイヤを交換したいところだが、立ち止まれる場所がない。
すると視線の先にコンビニがあったので、ほぼ回らないタイヤを引きずるように進む。
何とかコンビニに到着して、タイヤ交換ついでに昼食をとる。
再出発後にはトンネル越え。
足元がぬかるんでおり、はじめは横滑りに気をつけて進んでいたが、ぬかるみがどんどんひどくなり、そのうちタイヤが回りづらくなる。
トンネルを抜けてから見てみると、案の定タイヤがヘドロまみれ。
スピードが出ないまま進み、民家沿いの溝にキックボードを突っ込み、流水でヘドロを洗い流す。
こんな経験ははじめてである。
その先の下り坂を走ると、やたら前輪が震えることに気がつく。
坂を下ったところでタイヤを確認すると、前輪がほとんど回っていないことに気がつく。
さきほどのヘドロで、ベアリングが詰まったのだろう。
ごくまれに同じ現象が起こっていたが、前輪が原因だったのか。
そこからは長いアップダウンを経て、田老の集落へ。
ここも津波に流された町で、遺構として「たろう観光ホテル」が残っている。
遠くから見ると普通にきれいなホテルに見えるが、近づくと1階と2階は骨組みしか残っていない。
中へ入ろうとしたが、フェンスが設置され施錠されており、入れない。
どうやら予約がないと入れないそうだ。
少し前までは自由に入られたらしい。
何か事故か事件でもあったのかな?
より多くの人が津波の恐ろしさを肌で感じられるよう、一般開放するべきだと思うのだが。
いつの間にやら時間が押しており、徐々に日が暮れてゆくなか、ゴールのことしか考えられない状況となる。
旅をしていて、いちばんよくない精神状態である。
宮古の市街地に近づいたところでスマホのナビを使うと、とんでもない裏道を案内される。
すでに空が薄暗くなってきているので、少しでも近道をするべく、それに従う。
細く急坂となった墓地の横道をすり抜け、民家に差しかかる。
すると家の外で、鍋に火を灯す光景があちこちで見られる。
これはこの宮古地方伝統の「松あかし」というもので、8/1、8/7、8/13〜16、8/16、8/20、8/31に行われるお盆の行事だそうな。
きれいだなぁとは感じるものの、その光景を立ち止まって眺めたり写真を撮る気持ちの余裕がなく、ひたすら宿に急ぐ。
結局宿に着いたのが、午後7時過ぎ。
お風呂であまりゆっくりすることもできず、すぐさま夕食を探しに行く。
店外の雰囲気で決めたお店は、地の物が多く取り揃えられており、店員もハキハキとしている。
しかし、店員とも他の客とも会話ができず、期待はずれである。
何だか1日通して、グダグダな気分である。
たまにはこんな日があっても仕方ないか。
|
|
|