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埋没鳥居。火山噴火の威力を、これほどまでに
わかりやすく具現化したものはない。
野菜がたっぷり、おダシが黒っぽい「鹿児島ラーメン」。
みそ味よりも、具材全体が1つの味を作り出している。
豊富な具材で構成された「湯たまらん丼」。ひと口ごとに
違った味が楽しめ、値段が張ってでも食べる価値あり。
暗闇を迷い、ようやく宿にたどり着いた後の
温泉は格別。貸切で入れるのもうれしい。
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昨夜は、とても寝苦しかった。
他の人が動いたり、外で大きな車がとおるたびにベッドがゆれ、何度も目を覚ます。
疲れをともなう旅では、ゲストハウスという選択肢は使わないほうがいいみたいだ。
朝一番に出発し、午前6時半のフェリーで、再び桜島へ。
桜島を一周することが、旅の目標の1つであるからだ。
島の北側は、山だらけの南側とは違い、町が続いている。
学校のグラウンドや家の庭先など、土という土がまっ黒というのが、印象深い。
北側にある名所、「埋没鳥居」へ到着。
かつて桜島噴火があったときに、鳥居が火山灰をかぶって、全体の8割が埋没されたそうな。
埋没されっぱなしの姿は想像以上にインパクトがあり、自然の驚異というものを、まざまざと感じさせられる。
鳥居のすぐそばで休憩していると、急激な悪寒に襲われる。
気温が下がったのではなく、これは明らかに、体調不良。
昨夜の夜遊びが、たたったのか?
じっとしていると、体がガクガクと震える。
これはもう、旅を中断するしかない。
とりあえず体を動かして、少しでも体を温めよう。
で、行けるところまで行って、明日の朝の容態で継続するかを決めよう。
何とか桜島を一周し、再びフェリーで鹿児島市街へ。
まずは一目散に薬局へ行き、風邪薬を購入。
すぐに飲みたいところだが、空腹で飲むものではない。
ちょうど昼食どきだったので、商店街にある「鹿児島ラーメン」のお店へ。
お店は小さくこぢんまりとして、ごくごく庶民的な店構え。
おばちゃんが、ひとりで切り盛りしている様子である。
すすめられるままに注文したみそラーメンは、スープがまっ黒。
そして、野菜がこれでもかというくらい、入っている。
みそラーメンという割には、みその味が強いわけではない。
今まで食べたラーメンとはまったく異なる味わいで、どう表現したらいいのか。
ただ、決してまずいわけではなく、「ラーメンの具材を使った新しい料理」として、おいしくいただける。
食後に薬を飲み、再出発。
すると、少しずつではあるが確実に、しんどさが消えてくる。
薬って、ここまで即効性のあるものなのか。
とはいっても、体調が悪いことは確か。
1時間おきに休憩をとらないと、体がもたない。
国道を回避して、産業道路なる道を南下する。
名前からして、大型トラックがガンガンとおる殺風景なものかと思いきや、そうではない。
左手は大型店舗が続き、右手はえんえんと緑地が続く。
特に緑地の遊歩道は、自然を存分に感じられるので、かなり快適である。
ただ、休憩回数が多いせいもあり、時間がどんどん押してくる。
観光するヒマも、昼寝するヒマもなく、ただただ走って休憩をくり返すだけで、あまり楽しさを感じられない。
日が暮れかけてきたころ、空腹感に襲われる。
だいぶ宿には近づいているとはいえ、宿までガマンできそうにないので、おそば屋さんへ立ち寄る。
指宿名物だという「湯たまらん丼」を注文。
赤鶏の照り焼き・そぼろ・おくら・温泉卵がのった丼は、見た目からして豪華。
口の中に入れると、いろんな味が交互に広がり、うまい!
セットのそばもおいしく、いい値段はしたものの、じゅうぶんそれに見合う味である。
あとは、お宿に向かうのみ。
ではあるが、あたりは真っ暗で、お宿の案内標識がない。
さらには、手元の地図では縮尺が読み取りづらく、道があっているのかもわからない。
チェックイン時間はとっくに過ぎており、ますますあせる。
お宿に何度か電話し、案内を受けて、ようやく到着したのは午後8時。
遅い時間にもかかわらず、愛想のよいおかみさんに出迎えられる。
お風呂は、宿に2箇所ある家族風呂のうち1つを、貸切状態で使える。
かっ色がかったお湯に浸かると、1日の苦労・心配ごとが、本当にとれてゆく。
最高に気持ちがいい。
ただ、体調不良という心配に関してのみ、まだ拭い取れない。
旅を続行するかは、明日の朝の体調次第だ。
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