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「開聞岳」をのぞみながら走る。きれいな
三角形が、いつまでも追いかけてくる。
さつまいもの甘いにおいが漂う、「白波」の工場周辺。
こんなところで働いたら、昼から酒飲みたくなりそう。
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ややしんどさは残るものの、体調はだいぶ回復。
何とか無事、旅は継続できそうである。
出発してすぐ、指宿の温泉街を抜ける。
といっても、とても観光地とは思えない、ごくフツーの住宅地である。
ただ、その住宅地のどまんなかに「ソープランド」と大きくかかげた建物があるのは、いかがなものかと。
街を外れてからは、田園風景の道を抜ける。
そして、田園の向こう側に、きれいな三角形をした山がそびえる。
俗に「薩摩富士」と呼ばれる、開聞岳である。
山の圧倒的な存在感に、走りながらも見とれてしまう。
このあたりに住む人たちは、この光景が当たり前になっているのであれば、少しもったいない気がする。
ふと後ろから、ひときわ元気な声が近づいてくる。
自転車に乗った2人組の旅人が、どうやらキックボードに食いついてくださっている様子。
互いに軽くお話をし、写真を撮っていただき、短いながらも楽しい時間を過ごす。
さらに走り、芋焼酎「白波」の工場を横切る。
さつまいもの甘いにおいが、あたり一帯に広がる。
液体ではわからないが、本当に芋でできているんだなと、納得してしまう。
ふだん芋焼酎は好んで飲まないが、このさつまいもの甘いにおいをかぐと、ついつい飲みたくなってしまう。
次第に、体調も全快といっていいほど回復。
そして昼食をとる午後1時まで、休憩はたったの1回のみ。
体調のおかげか、はたまた「先を急がねば」という昨日のあせりがまだ残っているのか。
昼からは、山道に差しかかる。
坂の勾配はそうきつくないが、路肩も歩道もなく走りにくい。
時間に余裕があるので、少しでも疲れを感じたら、すぐ休憩をとる。
昼寝もしっかりする。
本来、このくらいゆっくりしたペースで走ることが、理想である。
宿に到着したのは、午後5時半。
4日目にして、はじめて太陽のあるうちにチェックインできた。
休憩もそこそこに、ビールを購入して、バス停へ。
というのは、近隣のビーチで「砂の祭典」なるイベントが開催されるらしいのだ。
サンドアートはもちろん、模擬店やら、花火やらがある大きなイベントだそうな。
しかし、バスが出ている様子はないし、そもそもバスの事務所が真っ暗。
隣にあるタクシー会社に聞いてみたところ、どうやら送迎バスは明日から出るらしい。
ちなみにタクシーを使う場合、片道1,500円もかかる、とのこと。
旅先でのイベントは楽しいものだが、さすがにそこまで金は出せない。
町中にイベントのポスターを貼っていながら、イベントへの足がないとはどういうことだ。
ぬるくなったビールを飲みながら、どこにもぶつけることのできない、いきどおりを感じる。
もう一生、この町に足を運ぶことはないだろう。
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