 |
川の向こうに点在するのは、数多くのキャンプ客。
楽しそうな声とBBQの匂いは、孤独を痛感する悪い刺激。
車1台分の幅で、川面スレスレに架かった、小さな橋。
決して観光地ではないが、こういうちょっとした風景が好き。
これ、本当に宿?門をまたいで大丈夫?
敷居の高い料亭にも見える、薫楽荘の玄関。
まさしく、昭和のたたずまい。扇風機からテレビ・
エアコンまで、徹底的に古く、趣がある。
|
「旅」という言葉には、自分磨きであるとか、冒険であるとか、どこか心躍る印象がある。
日常とは異なる風景と体験が、そうさせるのであろう。
ただ、そんな理想が1つもない旅もある・・・
大阪から東京まで、キックボードで走破!
奇跡的にも、会社から10連休という長期休暇をいただいたので、思い切って挑戦することにした。
キックボード旅史上、最長距離にして、最長期間。
さすがに、途中棄権するのではないか。
いつになく弱気な気持ちに襲われながら、午前8時半に家を発った。
だめだ、しんどい!
心が折れたのは、出発してわずか10分足らず。
猛烈な暑さに、普段の運動不足。
すぐにでも引き返そう、という気持ちが、頭をよぎる。
そんな精神状態の中、いきなり上り坂。
上り切ったころには、心臓のバクバクがまったく止まらない。
出発して30分しか経っていないというのに、まるで1日走り切った後のような、激しい疲労感。
こんなペースで、本当に東京まで行けるのか?
しかし、再出発後は太陽が雲で覆われ、暑さがやわらぐ。
坂も少なく、先ほどとはうって変わって、快適。
先ほどまでの激しいしんどさは、「気を引き締めろ!」という警告だったのかも知れない。
午前11時、休憩がてら何となくタイヤを見てみた。
すると、タイヤとホイール部分が、分離している。
新品だったのに、半日も持たずに潰れてしまうとは!
スペアは7個用意しているけれど、こんなペースで壊れては、とても東京まで持たない。
早くも、大きな不安要素にぶち当たる。
さらに1時間後、昼食休憩をしようとコンビニに立ち寄った矢先、急激なおなかの不調に襲われる。
汚い表現で申し訳ないが、いわゆるゲリである。
しかも、今までの人生で体験したこともない、激しいもの。
猛暑・タイヤの故障・そして体調不良・・・
わずか半日で、こんなに苦悩が続くものだろうか。
引き返そう!
とても継続なんて、ムリである。
ただ、残りの夏休みはどう過ごそう?
これだけ大それた旅を友達みんなに言いふらして、どれだけバカにされるだろう?
どこで電車に乗ったらいいだろう?
引き返すにあたっての要件をいろいろ考え、とりあえず今晩だけは予定どおり上野の宿へ泊まることにした。
再出発しようにも、雲がなくなっていて暑い。
時間的にも、いちばん暑い時間である。
とりあえず休憩しようと、昼寝した。
1時間ほど寝ただろうか?
おなかの調子が、ウソのように治っている。
おまけに、帰りたいという気持ちも、スッキリなくなった。
これで、思いっきり旅を再開できる!
そこからは、夕方になるにつれ、どんどん気温が下がる。
坂道がひたすら続くものの、午前中のバテ方に比べると、断然ラクである。
なるほど、この旅は昼間ゆっくり休んで、夕方に走るというペースを続ければいいな。
この時期は、午後7時くらいまでは明るいし。
午後6時過ぎ、ようやく宿のある伊賀上野へ到着。
しかし、印刷してきた宿の地図では、場所がわかりにくい!
そこで取り出したのが、最近購入した、スマートフォン。
ナビ機能で宿を検索すると、めちゃくちゃ詳細に場所がわかる。
今さらながら、スマートフォンの便利さに驚く。
今後の旅でも、おおいに活躍しそうである。
無事にたどり着いた「薫楽荘 」は、玄関先が老舗の料亭かと思えるほど、古めかしいたたずまい。
なんでも大正時代からあるそうで、部屋は思わず平成であることを忘れさせる、ノスタルジックな和室。
建物の雰囲気もさながら、わざわざ女将さんがあいさつに来てくれる、ということがすばらしい。
4,000円の宿で、こんなサービスはまずない。
キックボードの旅にもすごく食いついてくださって、とてもお話上手な方である。
今日1日のさまざまな不安が、一気に癒やされる。
波乱万丈な初日であったが、果たして明日以降、無事に旅は続けられるのだろうか。
|
|
 |