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早朝から客が絶えない、日本一の砂場。
砂しかないのに、この集客力は恐るべし。
きれいに整備された、砂丘の隣にある遊歩道。
人通りのないことが、ただただもったいない。
路肩が狭く、カーブだらけの道は本当に恐怖。
そんな中、絶えず続く絶景だけが心の支え。
山道の終わりを知らせる、長く蛇行した下り坂。苦痛からの
解放という意味でも、この旅いちばんの心地よさ。
人里離れた無人駅では、自然の音しか聞こえない。
こんな場所で長居すると、日頃のストレスも消える。
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走る距離は昨日より短いし、たまにはゆっくり寝よう。
と思っていたが、午前6時半という早朝に起きなければいけなかった。
というのは、朝食が午前6時45分開始だからだ。
宿がほぼ満室なので、混むからなるべく早めがオススメだ、とチェックイン時に教えてもらったのだ。
時間どおりに食堂へ着き、バイキングのおかずをがっつり取り食べているうちに、案の定、席待ちの客がわんさかと列をなしていた。
外は、だいぶ風がおさまっている。
とはいえ、初日からずっと吹いている強風は健在だ。
しばらく走ると、鳥取砂丘が見える。
相変わらず、壮大で見ごたえのある砂場である。
しかしながら、ひとりで寄る気にはならず、砂丘沿いをただ走り抜ける。
砂丘から海沿いに東へ抜ける道は、松林に囲まれ、歩道がきれいに整備されている。
車も少なく、実に快適である。
歩いて散策しても気持ちよさそうなのに、観光客がぜんぜん流れて来ないのが、もったいなく感じる。
東浜というところから、国道は自動車専用道路へと変わる。
仕方なく県道を進まないといけないのだが、地図を見るだけで、ここが山道だとわかる。
案の定、とんでもない勾配の坂道が続く。
途中にあった「七坂八峠古道」という標識の名前からも、いかに大変な道なのかがうかがえる。
ただ、山登りするくらいの覚悟を決めていたおかげか、あまり苦には感じなかった。
それよりも、海の景色がすばらしい!
進むごとに背景が変わり、いろんな奇岩が姿をあらわす。
道が狭いため、車やバイクだと、この眺望を停まって楽しむことはできないだろう。
また、途中は急勾配な道が多かったが、最後の下りは比較的なだらか。
ける必要もなく、スピード調整をする必要もなく、快適に進めて気持ちがいい。
昼食は、浜坂港のすぐ近くにある食堂へ。
2階から6階までが食堂というビルに入るも、ツアー会社が店ごと押さえていたり、30人以上待ちだったり。
休憩がてら待つのを覚悟しようとしたが、さすがに30人以上待つとなると、1時間は軽くロスしそうだ。
諦めて他を探すと、すぐ隣のビルに、1軒食堂がある。
行列はあるものの、先ほどよりも待ちが少ない。
先ほどの店で妥協しなくてよかった。
何だかんだで待たされはしたが、日記を書くなどするには、ちょうどよい時間である。
お待ちかねの海鮮丼は、さすがに鮮度が抜群で、うまい!
この旅の昼食では海鮮丼をよく食べているが、間違いなくここがいちばんおいしい。
食後は、浜坂駅前に移動し、足湯へ。
山陰は温泉が多く、このような無料の足湯が多くて、ありがたい。
たっぷり体力を回復した後は、この旅には珍しい峠越え。
桃観峠は、標高こそ高くないが、上り坂がひたすら続く。
峠の手前で体力に限界を感じ、休憩スポットを探す。
すると、左手に細い道が伸びており、「九谷駅」という標識を見つける。
駅舎までの細道は、人が住んでいるのかわからない民家が数軒あるのみ。
駅舎も無人化されており、プラットフォームの日陰で休憩していても、人の気配をどこにも感じない。
誰もいない空間で、自然を感じながらひとりでたたずむのは、実に気持ちがいい。
峠を越え、坂を下りきった余部(あまるべ)というところに、「空の駅」というものがある。
見てみると、かつて使われていた鉄橋が、展望台となっているらしい。
そこそこ高い場所にあり、階段を上っていかなければならない。
観光にはいいのだろうけれど、さすがに体力をムダに使いそうだし、人も多いので、パスした。
あとは宿へ向かうのみ。
と走っていると、後ろから来た車が僕を追い抜かすや、停まる。
車の横を通ると、ご年配の男女4名の方が、精一杯に応援してくれる。
というのは、昼食後おみやげ屋に寄っていたとき、たまたま話しかけてくれた方々なのだ。
お昼のときも「さっき坂で見かけたよ」などと言うあたり、さぞかし車内では僕の話で盛り上がってくれたことだろう。
あまり長くは話せなかったが、最後は小さなお菓子をいただき、お別れをした。
こういう出会が、本当にたまらなくうれしい。
お宿は、住宅地の一角にある民宿。
見た目があまり民宿っぽくなく、「ホントにここか?」と何度も地図を見ては、戸をたたくのをためらう。
この旅ではじめての和室だが、やはり和室は落ち着く。
ただ、同じフロアに家族連れが2組ほどあり、さっきから子どもの声がギャーギャー聞こえてくる。
果たして、ゆっくり眠れるのだろうか。
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